累計発行部数が1億部を突破した超人気漫画『キングダム』。作中では主に「本能型」「知略型」の2タイプの武将が登場し、時として前者が勝利する。ビジネスの世界でも、データ分析に基づいた緻密な計画が失敗し、「勘と経験」に基づいた判断が成功を収めることがある。こうした状況は、なぜ起こるのか――。ダイヤモンド・オンラインが配信している「学びの動画」の特集『入山章栄の世界標準の経営理論』(全30回)では、入山氏が視聴者に薦めたい「名著(漫画含む)」を厳選。経営学と絡めながら解説している。今回は、その骨子を書き起こした記事を特別公開する(元の動画はこちら)。
ビジネスリーダーとして
最強なのは知略型?本能型?
『キングダム』(原泰久/集英社)とは、中国の春秋戦国時代を舞台に、奴隷の身分から大将軍を目指す「信(しん)」と、中華統一を目指す「政(せい)」という2人の主人公を描いた歴史バトル漫画だ。
キングダムでは、敵味方問わず大勢の将軍が登場し、戦争を繰り広げる。戦いを引き立てるスパイスとなっているのは「将軍のタイプ」である。個性豊かな将軍たちが独自の軍略をぶつけ合い、ファンが思いもよらない方向へと戦局が展開する――。これも、同作品が人々の心をつかんでやまない魅力の一つだといえるだろう。
作中で活躍する将軍たちのタイプは、大きく「知略型」と「本能型」の2種類に分けられる。自身もキングダムファンだという早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏は、この分類はビジネスパーソンにも当てはまると説明している。
「知略型」とは、いわゆる頭脳タイプの軍略家のこと。冷静かつ論理的に戦略を組み立てていく将軍を指す。キングダムの世界で言えば、戦況に応じてさまざまな陣形を使い分け、地理的に有利な場所に陣を敷くなど、理詰めで戦う将軍・魏軍の呉慶(ごけい)が該当する。
「本能型」は、知略の真逆。つまり、「野生の勘」で突き進むタイプを指す。キングダムの世界では、物語の序盤で呉慶と戦った、秦軍の麃公(ひょうこう)将軍がその典型だ。麃公は細かな戦略は立てず「突撃じゃあ」と突き進み、敵兵をバッタバッタとなぎ倒す。「猪突(ちょとつ)猛進」を体現したような武将である。
そこで生じるのが、知略型と本能型、どちらのタイプの将軍が強いか――という疑問だ。キングダムの世界では永遠のテーマといわれており、どちらが強いかは作中でも明確な答えは出ていない。
しかし、現代のビジネスパーソンからすると、どちらかというと「知略型」の方が「戦(いくさ)で勝てそう」「上司にしたい」「経営者をやってほしい」と思えるのではないだろうか。