「すぐに人を嫌いになる人には、ある特徴があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
すぐ人を嫌いになる人
どんな人でも、「メンヘラになってしまう瞬間」はおとずれます。
それは、人への評価や感情が極端になってしまうようなときです。
たとえば、人に少し優しくしてもらっただけで、その人のことが忘れられなくなったり、好きになってしまうことはないでしょうか。
相手のことを「好き」という感情でプラスに働いているときには、「自分のことをもっと好きになってほしい、優しくしてほしい」と考えて積極的なアプローチができます。
しかし、少しでも自分にとって不都合なことがあると、極端にマイナスな思考になります。
LINEの返信が遅れるだけで「見捨てるつもりか!」と思ってしまったり、その反動で束縛してしまったりするのです。
もし、その人と別れたりしたら、苛烈な追い込みや中傷をして、
「自分の感じた痛みや葛藤をわからせてやらなければ気が済まない」
という強い衝動に動かされてしまうこともあります。
その結果、人間関係のトラブルや問題を起こす危険人物のようなレッテルを貼られてしまうことがあるのです。
この極端さは、恋人に限らず、親や子ども、会社の上司、部下、好きなアーティストなど、「自分にとって必要な人」にほど強く表れてしまいます。
ちなみに、この思考を、「二極型」と呼びます。
「二極型」への処方せん
こういうときは、
・あたたかい関係を築くこと
・長期的な視野が持てること
が必要です。
二極型の思考になってしまう背景には、人に傷つけられたり、見捨てられたりすることを極度に恐れてしまう「人間への不信感」があります。
「人を嫌いになること」は、自分が傷つけられたり、ツラいことに巻き込まれないようにするための防衛機制なのです。
防衛機制は、過度な緊張状態や過去のトラウマによって過敏に反応してしまいます。
人間だけに限らず、物事はつねに流動します。
晴れの日があれば雨の日もあります。曇りや雨のち晴れというように、人の評価や感情も流動します。いいこともあれば悪いこともあり、好きとか嫌いといった評価も「100対0」と分けることができないのです。
瞬発的な「嫌い!」を乗り越えるには?
たとえば、テレビに出てくる有名人やアイドルがいて、その人がちょっと失敗や問題を起こした際に「裏切られた」と感じてしまいませんか。
そのとたん、その人が作った作品や歌などが、ひどく汚らしく感じてしまったり、魅力がなくなってしまったりします。
作品そのものは一切変化していないのに、評価が変わってしまう。
人間という生き物の「先入観」が、いかに強いかがわかる例です。
それでは、「長期的な視野が持てること」について考えてみましょう。
今すぐには無理でも、「1年後、好きになる可能性はあるかも」ということを考えてみるのです。
そうした思考を1秒でもしてみることで、衝動的に攻撃してしまうことは回避できます。
そうやって、自分の考えを変えていきましょう。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。