「親ガチャに外れました」
そんな悩みにこたえるのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
親から切り離された道
「親ガチャ」という言葉が若者の間で話題になりました。
たしかに、「親」のように環境に関するガチャの影響はあります。
それに外れてしまったと思い込む人は、どう生きればいいのでしょうか。
というのも、親により与えられる環境が劣悪であると、その後の人生に大きな障害となってしまう場合があります。
私も精神科医として働くなかで、「なんでこんなにいい子なのに、ひどい環境で生きなければならないんだろう」と感じてしまうことはあります。
トラウマによって人を信じられなくなったり、我慢するクセが抜けずに他人を頼れなかったりと、その後の人生に多大な影響を与えてしまいます。
「親の影響」は減らしていける
ですが、これらの環境による影響も、あなた自身の選択によって減らすことができます。
遺伝子が環境によって変化するように、あなたの考え方やクセ、価値観なども、環境の変化や新たな価値観に触れ、「こんな世界や生き方があるんだ」と感じることで、変化させることができます。
10代の頃に身についてしまった「考え方のクセ」は、社会人になってから取り除くべきことです。
しかし、そんな話をしても、
「そんなふうに考えられるだけ恵まれている人だ」
「やりたくてもできないから苦しんでいるんだ」
とあなたは考えてしまうかもしれません。
ですが、「親から切り離して自分の人生を生きる」という選択ができるのもあなただけなのです。
どんなに理解のある親でも、子どもに反発するようなことを言われたり、自分の意にそぐわないことを言われたらムッとしてしまうものです。
まして「あなたの育て方が悪かった」なんて子どもから指摘されても、親としては自分のことを否定される気持ちになりますから、なかなか受け入れられません。
子どもからは説得できない、話し合うことができないという親子関係もたしかに存在するので、無理やり親を変えようとするのではなく、まずは自分を守る選択を取るべきです。
「でも、親は見捨てられない」という共依存のような感情を持ってしまうこともあるかもしれませんが、親に対する罪悪感よりも、まずは自分が幸せになることが最優先事項です。
もし本当に親のことを支えたいのであれば、まずあなたが親を支えられるような生活的、精神的な余裕を持つのです。
そのためには、まずは親と距離を取って、自分を守ることもまた、ひとつの選択ですね。
現世のうちに生まれ変わる
人生はガチャの連続ですが、同時に、「タバコを吸わない」という選択によって、あなたが肺がんになる確率を下げられます。
「毎日少しずつ運動をする」という選択によって、健康になることもできます。
あなたが選択を続ける限り、親ガチャがあなたに与える影響もだんだんとなくなっていくこともまた事実なのです。
ガチャで諦めるのではなく、あなた自身の考え方を現世のうちに変えましょう。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。