「グルーミング族」が広まり
ルッキズムという課題が浮き彫りに
韓国では、“グルーミング族”という言葉がよく用いられる。外見に気を配り、美容やファッション、体型管理に積極的に時間やお金を投資する男性を指す造語だ。
「“グルーミング族”という用語の起源と最初に使われた時期は明確ではありませんが、およそ2010年代半ばから使われ始めたと思われます」
グルーミング族の登場から約10年、現在では検索すればニュース記事も数多くヒットするワードとなった。それだけメンズ美容が一般的になってきているということだ。
「韓国には”おじさん”を意味する”アジョシ”という言葉があります。アジョシに対する境界線はすでに曖昧になっています。昔は一般的に40代半ば以上を指すことが多かった言葉ですが、現在は年齢によるはっきりした線引きはなくなってきています」
つまり、見た目年齢と実年齢の相関が徐々に薄まっているというのだ。これも、年齢を問わず外見に気を配る男性が増えたことによる影響といえるだろう。
「男性も外見を磨く時代になったことで、新たに出てきた問題もあります。それは男性におけるルッキズムの激化です」
女性は今でこそリアルサイズ・プラスサイズモデルなど多様性を受け入れはじめているものの、依然として外見重視の傾向はなくなっているわけではない。日々、美のために努力を重ねると同時に疲弊している人がいるのも事実だ。
女性が長く経験してきたこの外見至上主義の波がまさにこれから男性にも本格的に襲いかかろうとしている。メンズ美容が広まる上で、他人からの評価を重視する限りは避けられない課題となるだろう。
ゴニ氏は、日本の男性においても美容への関心の高まりを感じているという。彼が経営する表参道の美容室・GUNHEE TOKYOにも、訪れる男性客は増えている。6年前、日本にサロンをオープンした当初は1割ほどだった男性客が、今は4割程度を占めるようになっているとのこと。
「自分のために投資することは大切だと思います。重要なのは、過度にならないこと。自分に似合わない服を着ることが問題なのであって、若々しい服を着ることが問題なのではありません」
日本人男性は、20代、30代の頃から身につけるものをアップデートできずにいる人もいれば、もうオジサンだから……とあえて“老け見え”する方向に自分の身だしなみをアップデートしてしまう人もいるという。
「40代だから、50代だから、頑張って若作りしなければならないだとか、反対にもうオジサンだから若者と同じことをしてはいけない、などと考える必要はありません。自分に似合うものを使い、身につけ、自分らしく振る舞うこと。必要なのはそのための投資です」
適切な身だしなみと清潔感は、仕事においてもプラスの影響をもたらしてくれるもの。自分が自分らしく過ごせる、見られたい自分に見られるための美容を、無理なく取り入れられる方法ではじめてみてはいかがだろうか。