仕事に追われて、家族や友人との約束をキャンセルせざるを得なくなった、という経験をしたことがある人は少なくないだろう。そうならないためには、できるだけ仕事を効率化して、本当に注力すべきことに時間を割く必要がある。そこで障壁となるものの一つが、会議や打ち合わせだ。執筆家の四角大輔氏の著書『超ミニマル・ライフ』では、アポをより正確に取捨選択し、会議や打ち合わせの負担を軽くする方法を提案している。本記事では、本書の内容をもとに、本当に大事なことに時間を使うための方法を紹介する。(構成:神代裕子)

超ミニマル・ライフPhoto: Adobe Stock

無駄な会議に時間を奪われてはいないか

 会議に打ち合わせ、取引先からの電話……。仕事をしていると、実際の業務以上に人との対応に時間を取られてしまう。

 気がつけば、あっという間に夕方になっていることも多い。

 そうなると、その日のうちに終わらせなければならない業務のために残業することになり、プライベートの予定をキャンセルすることにもなりかねない。

 また、コロナ禍になり、対面での打ち合わせは減ったものの、オンラインミーティングが朝から晩までびっしり、といった声もよく聞く。

 オンライン化したことで移動時間が不要になったが、その分ミーティングの件数が増えてしまったら意味がない。

 四角氏は「どうでもいい誰かに毎日を──いや、人生を──奪われないようにすべく、一つ一つのアポをシビアに取捨選択しないといけない」と注意喚起する。

アポに忙殺されてはいけない

 四角氏も、かつては1日に何件もの会議や打ち合わせに参加していたそうだ。

駆け出しプロデューサーの頃、まだ半人前という自信のなさから、全てのアポにYESと即答していた。会議や打ち合わせなどを含めると1日10本なんて日もあった。当然、終わるのは夜。そして7本目を超えたあたりから記憶がない……。(P.276)

 しかし、スケジュールがアポで埋まっていると、仕事をしている感はあれど、タスク過多で業務が滞り、負担ばかりが増えていく。

 結果、余裕がないのでミスが多発して、信用を次々と失っていく経験をしたのだそうだ。

 そんなふうにならないためには、不要なアポは断り、必要なものもできるだけ短時間で終わらせる必要がある。

 そのために四角氏が使っている「アポをより正確に取捨選択するためのフロー」と、「ミーティングや打ち合わせを軽くする交渉術」を紹介する。

本当に必要な会議や打ち合わせを見極める方法

 まず、「会いたいから時間がほしい」と打診された時には、以下のフローに従い、受けるべきかどうかを判断する。その際、リアルな対面にすべきかも検討する。

①「議題」の確認

 最初に訊ねるべきことだが、やらない人が多い。単刀直入に聞きづらい場合は「話して決めるべき重要なポイントは何になりますか?」といった表現で聞こう。

 口頭でアポの相談を受けても、「まずは議題をメールでいただけますか」と、やりとりをメールへシフトさせるのがポイントだ。

 必要性がある議題が提案された場合は、②へ。あやふやな回答しか得られない場合は、お断りのフロー④に移行する。

②「リアルな対面で行うかどうか」の判断

 提案された議題から、「リアルな対面」で奪われる次の労力と時間のコストに見合うかを考える。

 それは、「A:お互いの予定を合わせる」「B:ミーティング場所を押さえる」「C:物理的に移動して行う」の3つだ。

 手間と時間のコストは「対面→オンラインミーティング→電話」の順に下がるので、どの方法を選ぶかも重要なポイントだ。

③「A:お互いの予定を合わせる」のみが該当する場合

 コスパに見合わない「リアルな対面」はなるべく避けるべきだ。

 低コストの「電話打ち合わせ」をまずは検討し、顔を見ながらの方が効率的な場合はオンラインミーティングを提案するようにしよう。

④「A」「B」「C」どれにも該当しない場合

 ネット上で「アポ 断り方」などと検索したら出てくる、「角が立たない断り文」を参考に、メールで丁重にお断りを入れる。

 メールの方がいいのは、「テキストという体温のない記号」を通すことで、相手の感情をクールダウンさせられるからだ。

 また、チャットやSNSのメッセージと比べると、現在のメールは「公式ツール」という印象を与える。その世間が抱く「オフィシャル感」を利用して、メールで断ると角が立ちにくい。

身軽でいることがチャンスにつながる

 本書にある四角氏からの提案をまとめてみよう。

・なるべく対面よりも、電話やオンラインを選ぶべき
「B:ミーティングの場所を押さえる」「C:物理的に移動して行う」といった時間の確保のコストがかかっていないので、リスケの相談がしやすい。

・どの方法でも参加人数は最小限に
相手が少なければ少ない方が、もしもスケジュールの再調整が発生した場合に苦労が少ない。

・アポを確定する際には、必ず「ミーティングの終わり時間を決める」
 アポは、15分単位で刻み、1時間想定であれば「45分で大丈夫ですよね?」と提案し、お互いの集中力を高めて効果を最大化する。

 四角氏がここまでアポを軽量化しようとする理由は、「動かせない予定が先々まで埋まっていると、行動の自由度も、スケジュールの流動性も下がってしまう」からだ。

 大きなチャンスは予期せず突然やってくる。そのチャンスを逃さないためにも、身軽でいることが重要なのだ。

他人に時間を奪われない対策を

 仕事ができる人は、いざという時にパッと動ける、フットワークの軽い人が多い。

 無駄な会議やミーティングに貴重なチャンスを奪われないように、「その場に自分は本当に必要か」を徹底的に考えているのだろう。

 そうして無駄な時間を排除することで、本当に大事なこと……例えば、新しい企画や次の打ち手などを考える時間や、家族や友人と過ごす時間をしっかり確保しているのだ。

 時間は誰にとっても有限だ。本当にしたいことに時間を使えずに、どうでもいいものに時間を奪われていては、あっという間に年を取ってしまう。

 自分の時間を大事なことに使うためにも、いつでも動ける自分でいるためにも、会議やミーティングの取捨選択はしっかり行いたいものだ。