クリーンテック領域への投資がグローバルで加速

脱炭素や気候変動に関連する領域はクリーンテック(CleanTech)やクライメートテック(Climate Tech)とも呼ばれ、近年グローバルで投資が加速している。PwCが発行するレポート「State of Climate Tech 2021」によると、2021年上半期には同領域への投資額が600億ドル(約6.8兆円)を超え、前年同期の284億ドル(約3.2兆円)から2倍以上に増加した。

ビル・ゲイツ氏主導で2016年に発足し、2021年1月には新たに10億ドル(約1100億円)の資金を集めたBreakthrough Energy Venturesを筆頭に、この領域に特化したVCファンドも続々と登場。約1.6億ドル(約180億円)のClimate Fundを新設したUnion Square Venturesのように、老舗VCが既存ファンドとは別で特化型のファンドを新設するケースも増えている。

 

環境関連のスタートアップへの投資は「グリーンテック」という文脈で2000年台後半にも一時的にブームになったが、その盛り上がりは長くは続かなかった。これに対して近年増えてきているクリーンテック特化型のファンドの多くは「投資回収までの期間」や「投資領域」の観点で特徴が異なると鮫島氏は話す。

グリーンテックバブルの時代にはファンドの運用期間が短く、数年で投資を回収しようとした結果、失敗に終わった例もあった。それに対して近年は、Breakthrough Energy Venturesの20年が代表するように、投資回収までの期間を長めに設定するファンドが増えている。

投資領域についてもかつては「太陽光パネル」「バイオ燃料」など対象を極端に狭めたことでうまくいかなかったファンドもあったというが、今はそのようなケースは減っているそうだ。

また特化型のファンドが急速に生まれつつある背景には、機関投資家の変化や国の政策なども関係している。機関投資家が気候変動やクリーンテックに対する動きを強めるほど、この領域へ投資をするVCにも多くの資金が集まるようになるからだ。先進国がカーボンニュートラルに向けた目標を掲げ、国として取り組みを強化させていることも大きい。

“気候変動のど真ん中にヒットするような挑戦”を支えるには既存のルールでは難しい

今回ANRIが立ち上げたグリーンファンドでも運用期間は12年をベースに、最長で15年まで延ばせるように設計されている。VCファンドは運用期間を10年とするものも多い中で、研究開発型のスタートアップをじっくり支援しやすい仕組みを作った。