事業会社も巻き込みながら実証実験を進め、そこで生まれた事業を共同でスケールアップさせていく。「オールジャパンで取り組んでいくイメージ」(佐俣氏)で、技術実証が進んだ結果として、LPである事業会社からスタートアップへの直接出資や買収などの可能性もあるという。

「2050年の日本のインフラ」を支えるような企業の創出へ

鮫島氏によると日本国内でも気候変動や環境問題に取り組む企業への“官”の支援が整い始めてきており、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)やムーンショット型研究開発事業など、基礎研究を後押しする仕組みが広がってきた。グロースステージの企業を支える取り組みとしては、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に2兆円の「グリーンイノベーション基金」が創設されている。

一方で、圧倒的に足りていないのが「シード・アーリーの部分を支えるプレーヤー」だ。ミドルステージ以降であれば大学系のファンドや事業会社など民間のプレーヤーもいるが、そこに至るまでのシード・アーリー期を支える存在が少ない。

ANRIのグリーンファンドの狙いはそのギャップを埋めていくこと。優れた技術シーズを発掘し、ゼロから事業立ち上げに伴走する“共同創業”に近い投資も積極的に行っていく考えだ。

グリーンファンドの1号案件となったレーザー核融合商用炉の実用化に挑戦するEX-Fusionもまさにその一例。鮫島氏が日本から核融合スタートアップを創出したいと考え、2017年からさまざまな研究室や学会に足を運び、会社の立ち上げ期から支援した。

日本ではまだクリーンテック領域のスタートアップ自体が少ない印象もあるが「ベンチャーが少ないだけで、技術はある」というのが鮫島氏の見解だ。

「実際に研究のレベルが高く、日本の大手製造メーカーや海外VCが注目をしていたり、海外ユニコーン企業がアドバイザーになっているようなラボもあります。ただ技術はあるものの会社にはなっておらず、日本のVCがコンタクトできていないところも多いです」

「だからこそ、自分たちがこれまでやってきた『ゼロから掘り起こす』スタイルがこの分野でもできるという感触がある。時間はかかると思いますが、ベンチャーがないから投資をしないというのではなく、自分たちがゼロから一緒に会社を作っていくような挑戦をしていきたいです」(鮫島氏)

核融合領域に限っても、2021年12月にマサチューセッツ工科大学発のコモンウェルス・フュージョン・システムズが18億ドル(約2040億円)を集めるなど、グローバルでは大型の資金を集めるスタートアップも生まれている。