スタートアップに足りていないのは資金ではなく専門スキル

CSPの最大の特徴はスキルパートナーによるサポートだ。初期のパートナーとしてはプロダクト開発やデザイン、マーケティング、弁護士、人事など各領域の専門家10人が参画。スタートアップの創業から上場までを経験した南氏自らがフロントに立って投資先のメンタリングを実施し、各社の課題に応じて適切なパートナーをマッチングしていくという。

初期のスキルパートナー
初期のスキルパートナー

なぜ専門家と初期のスタートアップのマッチングを重要視しているのか。背景には昨今の調達環境の変化と、南氏自身のかつての経験がある。

「自分が起業した2012年と昨年を比べると、ベンチャーの資金調達額は10倍以上に増えている」と同氏が話すように、特に成長著しいスタートアップを中心に日本国内の企業に供給される資金は一気に増えた。資金調達環境が徐々に整いつつある一方で足りていないのが、スタートアップの成長を支える「知見やスキル」だ。

「VC事業で難しいのは、うまくいかないか瀬戸際の案件だと思っています。明らかに難しいのは初期の仮説が間違ってしまっているところが多く、そこから浮上させることはなかなか難しい。でもほとんどのスタートアップは仮説は悪くないものの、お金や良い人材が足りなかったり、プロダクトを磨ききれなかったりする中で必死にもがいています。正直ココナラ自身もそのような状況に陥っていた1社でした」

「ここの成功確率を上げるのは、究極的にはお金ではないと思っています。その段階の企業を支援することで一定のラインを超えることさえできれば、お金が集まる時代になってきている。自分たちの存在意義は、仮説は悪くないけれど、一歩突き抜けられずに苦しんでいる起業家に寄り添うことです」(南氏)

先輩起業家や専門家のスキルを借りれば、余計な回り道をせずに済んだり、不必要な失敗に陥ることを避けたりできる可能性もある。ただ専門家と初期段階のスタートアップをマッチングする仕組みにはニーズがあるものの、従来の方法では実現が難しかったと南氏は話す。

最大のネックは「報酬」だ。

初期のスタートアップは資金力に限りがあるため、優れた知見やスキルを持つ専門家を雇いたくても資金不足が課題になる。現金報酬に代わる仕組みとしてストックオプションが活用されることもあるが、「成功すれば渡しすぎ、反対に失敗すれば少なすぎ」といったように適切な設計が難しい。

近年はVCが投資先の支援策の1つとして専門家と顧問契約を結ぶ例も出てきてはいるものの、南氏が関係者にヒアリングをしている中でも「月額契約の場合、意外と枠が埋まらないなど稼働量の調整が難しい」「専門家が投資先の成長に貢献しても、報酬のアップサイドが見合わないことがある」などの悩みが聞こえてきているという。