切り替え工事を直前に控えた南砂町駅(2024年5月7日筆者撮影)切り替え工事を直前に控えた南砂町駅(2024年5月7日筆者撮影)

東京メトロは5月11と12日の2日間、東西線東陽町~西葛西間を終日運休し、南砂町駅の線路切り替え工事を実施した。これはホーム1つを2本の線路が挟む「1面2線」構造の南砂町駅を、ホーム2つと線路3本の「2面3線」に造り替える大改造工事で、今回の工事は完成までに3回行われる切り替え工事の初回である。予定通りに完成するとしても構想から16年の大事業だが、そこまでして南砂町駅を大改造する理由とは何なのか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

地下鉄駅では不可能な
天窓を実現できたワケ

 開業当時の南砂町駅周辺は大小の工場が広がる工業地域で、初年度(1969年度)の1日当たりの乗降客数は1万2113人にすぎなかった。開業後、周辺で都営住宅の整備が進み、1980年度には2万2565人まで増加したが、営団地下鉄全96駅中84位という小駅の位置づけは変わらなかった。

 1990年度は全111駅中86位の3万1235人、2000年度は全122駅中83位の3万3454人だったが、2000年代に入って工場移転と都心回帰が進むと、様相は一変する。2005年度は4万3201人、2010年度は5万7576人、2015年度は6万2257人で、15年で利用者は倍近くになった。

 快速列車が通過するにもかかわらず、幅6メートルしかないホームなど、半世紀で5倍になった利用者を受け入れるには狭すぎる駅は大きく生まれ変わった。ホーム両端の階段からつながる改札・出入り口はホーム中央に集約され、エスカレーター、エレベーターが新設・増設された。

天窓を備えた南砂町駅新改札口(2024年5月7日筆者撮影)天窓を備えた南砂町駅新改札口(2024年5月7日筆者撮影)

 筆者は、切り替え工事を目前に控えた5月7日に行われた報道公開に参加した。

 目を引いたのは改札口に設けられた天窓だ。通常、道路下に設けられる地下駅では不可能な試みだが、南砂町駅では地上用地を取得したため、実現した。

 天窓の先はどこにつながっているのか気になるが、まだ工事区域の中にあるため、外からは見えないそうだ。地上の開発計画は未定であり、将来的にどのような位置づけになるかは決まっていないという。

 新設ホームは中野方面行きホームとして使用され、渡り板で接続された従来のホームは西船橋方面行きホームとしてそのまま使われている。第2回切り替えで西船橋方面行きホームが新ホームに移り、旧ホームの改造工事を行った後に第3回切り替えを行い、完成する。次回以降の切り替え工事の日程は未定とのことだ。