実は2007年から始まっている「ファンド・オブ・ファンズ」

VCファンドがLPとして、別のファンドに出資する──いわゆる「ファンド・オブ・ファンズ」という取り組みを赤浦氏が始めたのは今から15年前、2007年のこと。

当時、インキュベイトキャピタルパートナーズの代表パートナーであった赤浦氏は、現在は共に代表パートナーを務める本間真彦氏と和田圭祐氏が立ち上げたVCファンド(本間氏はコアピープル・パートナーズ、和田氏はセレネベンチャーズを立ち上げている)に3億円ずつLP出資。

また、サムライインキュベート代表取締役の榊原健太郎のほか、スマートニュース代表取締役会長兼社長CEOである鈴木健氏にも出資をしていた過去を持つ。当時について、赤浦氏は「鈴木さんは事業会社には向かないと思ったので、『投資家になった方がいい』と言って、出資をしたんです」と振り返る。鈴木氏は投資家ではなく、起業家としてスマートニュースをユニコーン企業に導いており、赤浦氏は「僕の見る目がなかったんだと思います(笑)」と語った。

結果的に赤浦氏は本間氏、和田氏のほか、元エヌ・アイ・エフベンチャーズ(現:大和企業投資)の村田祐介氏と共に2010年にインキュベイトファンドを設立した。

また、インキュベイトファンドでは1人のジェネラル・パートナーに対して、2人のアソシエイトがつく仕組みを採用。アソシエイトは5年以内には独立し、自らファンドを立ち上げることを促されており、これまでに木下慶彦氏がSkyland Ventures,
佐々木浩史氏がプライマルキャピタル、木村亮介氏がライフタイムベンチャーズ、山田優大氏がFull Commit Partners、日下部竜氏がDRG Fundといったように独立系ファンドを立ち上げている。

17ファンドへLPとして参加、259社のスタートアップに投資組入

3号ファンドまではインキュベイトファンドのフラッグシップファンドから出資していたが、4号ファンドが立ち上がった2018年にフラッグシップファンドとは切り分ける形で、LP出資に特化したファンド「IFLP」の1号ファンドを69億円規模で設立した。

運用から約4年が経った2022年3月末時点で17ファンドへLPとして出資しており、これらのファンドを通じて合計259社のスタートアップへの投資が行われている(最終着地は300社前後の見込み)。また、IFLP出資先ファンドとIFLP出資者の協業事例は36件生まれており、IPO実績も4件生まれているという。

画像提供:インキュベイトファンド
画像提供:インキュベイトファンド

「日本でもファンドに投資する資金は増えてきています。ただ、実績がないベンチャーキャピタリスト志望の人には投資しない傾向にある。次の世代を代表するスタートアップを生み出していくためには、起業家をサポートする同世代の投資家の存在が重要です。特に独立系シードファンドが不足しているからこそ、我々は社内でベンチャーキャピタリストを育成したり、投資家としてのポテンシャルがある人を見抜いてサポートしたり、ベンチャーキャピタリストとして挑戦したい人を増やす仕組みを構築しています」(赤浦氏)