「システムとコンサルのどちらか1つのみを提供している企業が多い中で、1社単体でシステムから(クリーン電力などの)CO2削減策やオフセットのソリューションまでをワンストップで提供できるのが大きなポイントです。実際にその点に価値を感じて導入していただけるケースも増えてきています」(西和田氏)

アスゼロ導入先の約200社は製造業や建設、金融業界などが多い。上場企業の方がニーズは顕在化しているが、中堅企業の顧客もいるという。また金融機関との連携も進めており、農林中央金庫や地銀10社とタッグを組む。

脱炭素×ファイナンスの領域では、企業がCO2削減目標を達成すると金利や融資期間などの面で優遇を受けられる「サステナビリティ・リンク・ローン」のような仕組みも生まれている。このような取り組みに関心を示す金融機関が、融資先などにアスゼロの導入を推進するパートナーとなっている。

「中堅企業の視点では、大企業の顧客と取引をするにあたって脱炭素に向けた取り組みをしていなければ認められないような時代になってきています。そのほかコスト削減やブランディング、資金調達、将来的な炭素税の導入などを見越して(脱炭素経営を)いち早く進めたいという企業に活用いただいている状況です」(西和田氏)

18億円調達で事業加速、将来的なアジア展開も

アスエネの創業者で代表取締役CEOを務める⻄和田浩平氏
アスエネの創業者で代表取締役CEOを務める⻄和田浩平氏

アスエネ創業者の西和田氏は三井物産出身の起業家だ。同社で再生エネルギー領域の投資や事業開発などに携わり、在籍中にはブラジルのエネルギー系企業Ecogenへの出向も経験した。

当初から環境領域に関わりたくて三井物産に入社したが、出向先の代表などから刺激を受け、自身でも経営にチャレンジしたいと考えるようになったという西和田氏。キーエンス出身の岩田圭弘氏(取締役COO)やメルペイ出身のラクマ氏(テックリード)と共同で2019年10月にアスエネを立ち上げた。

もともとは社名にもある、クリーン電力サービス「アスエネ」からスタート。同サービスを展開する中で企業におけるCO2排出量の見える化・削減ニーズが高まってきたことや、既存顧客からもそれを求めるような声があったことなどを受け、2021年8月にアスゼロをローンチした。

今後も2つのサービスを展開していく予定だが、まずはアスゼロを注力事業として積極的に投資をしていく方針だという。

冒頭でも触れた通り、この領域はすでにスタートアップを含めて複数社が事業を始めている状況だ。海外では米国のPersefoniが2021年10月に1億100万ドルを調達。直近でもフランス発のSweepが7300万ドルを集めるなど、欧米を中心に勢いのあるプレーヤーが生まれてきている。