「コインチェックには未来がある」と信じ、火中の栗を拾った

──不正流出事故を起こしたコインチェックを2018年に約36億円で買収した経緯について、当時の狙いを教えてください。

私たちマネックスグループは、2017年10月に「第2の創業」として新たなミッションステートメントを発表しました。その内容は暗号資産を含めた、金融業界を取り巻く環境変化に対応していくというものです。その手段の1つとして、仮想通貨交換所を作る予定だったのですが、そんなタイミングでコインチェックの不正流出事故が発生しました。

当時のコインチェックは行政や社会、ステークホルダーへの対応に手助けが必要な状況。一方で、行政側は暗号資産を合法化していくために事態を収拾できる人を求めていました。

コインチェックの人たちとは、お互いのことを知らない間柄ではありません。それに、マネックスグループとしては仮想通貨交換所のための人材を求めていたところでもありました。そこで、コインチェックと行政の間に立つことはマネックスグループのニーズにもマッチすると考え、当時の経営陣に「一緒にやらないか」と声をかけたのです。

──当時の暗号資産は今よりも未知な部分があったと思います。新たな領域へ参入することに抵抗はなかったのですか。

実は、僕と暗号資産の関わりは2013年頃から始まっていました。きっかけは、米国で暗号資産事業を展開する友人から「渋谷界隈で暗号資産を持っている人に会ってきてほしい」と頼まれたことです。たしか1ビットコインが2000円だった時代です(笑)。もっと深入りしておけばよかったと思うところもありますが……案外古い付き合いなんです。

──コインチェックは2018年にマネックスグループ入りし、それ以降、テレビCMも再開するほど事業を拡大しています。この動きは予想どおりだったのでしょうか。

彼らには未来があると信じていたからこそ、火中の栗を拾いに行くようなことをしたわけです。成長率やペース、方向性が想像どおりだったかは、あくまで結果論でしかないので「何とも言えない」というのが正直なところです。

ナスダック上場を目指すが、コインチェックは引き続き国内に注力

──今回のコインチェック上場で話題となっているのが、SPACと呼ばれる手法を取り入れているところです。

コインチェックは、新しい産業を切り開こうとしています。そのためには資本だけでなく、人材やステークホルダーなど各方面で成長に必要なリソースを集めなければならない。これらを実現できる場所として、ナスダックでの上場がベストだと考えました。