左から、PALTAC専務執行役員・東日本営業本部長兼EC事業部長の山田恭嵩氏、サエラ代表取締役社長の山本健氏、TBM執行役員CSOの山口太一氏
左から、PALTAC専務執行役員・東日本営業本部長兼EC事業部長の山田恭嵩氏、サエラ代表取締役社長の山本健氏、TBM執行役員CSOの山口太一氏

年間で約6000万本、1日あたり約10万本以上廃棄されているビニール傘。安価だが壊れやすく、分解が困難でリサイクルに向かず、ほとんどは埋め立て処理されているため、環境負荷は大きい。この課題を解決すべく、大手ビニール傘メーカーのサエラ、卸販売企業のPALTAC、そして新素材を開発するスタートアップのTBMは、ビニール傘を代替する“使い捨てない傘”「サステナブレラ」を共同開発した。サステナブレラは金属を一切使用していないため、簡単にリサイクルすることが可能だ。

サステナブレラの最大の特徴は、TBMが製造し、使用済みプラスチックなどを原料とした再生材料を50%以上含む新素材「CirculeX」を使用している点にある。CirculeXは傘生地とハンドル部分に採用。骨部分もプラスチック製で、リサイクルを前提に作られている。加えて錆びる心配がなく、秒速15メートルの風速に耐えうる強度を誇るため、ビニール傘とは違い、使い捨てずに長く使えることがウリだという。

プラスチックのみで作られた「サステナブレラ」
プラスチックのみで作られた「サステナブレラ」

目指すは一般消費者の資源循環に対する意識改革

2022年4月にはプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)が施行し、企業が提供するプラスチック製品のスプーンやストローなどの削減が義務化された。TBM執行役員CSOの山口太一氏は、サステナブレラのような製品を展開することで、一般消費者も、資源循環を自分ごととして捉えられるようになっていくのではないかと期待を寄せる。

「プラ新法が施行し、企業はプラスチックを削減したりリサイクル可能な製品に置き換えたりしていく、自治体もより多くのプラスチックを回収できるようにしていく、というトレンドがあります。サステナブレラのような分かりやすい製品が世に出てくると、一般消費者にも『しっかりと分別して、回収してもらえれば、製品になる』という意識が芽生えるのではないかと思っています」(山口氏)

プラスチックと比較して環境に優しいCirculeXだが、課題もある。さまざまな種類・状態のプラスチックをリサイクルして製造されるため、製品ごとに品質のばらつきが出てしまうのだ。通常、色や光沢にムラがある製品は市場に流通しない。だが、小売側は「それ以上に環境配慮が重要」などと述べるなど、サステナブレラの仕入れに前向きだったという。