UPSIDERでは今後事業の多角化や国外でのサービス展開を見据えて組織体制を強化していく計画。それに向けた資金として、シリーズCラウンドで4月末までに約49億円を調達した。

同社によると5月末前後を予定しているファイナルクローズの段階では、下記の投資家を引受先として合計約54億円の第三者割当増資を実施。併せて、大手金融機関から約100億円の追加融資枠を確保する見通しだ。全体では総額約150億円の資金調達となり、創業からの累計調達額も約200億円になるという。

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UPSIDERの急成長の背景にはどのような要因があるのか。市場の変化やこれからの展望などを代表取締役CEOの宮城徹氏とCOOの水野智規氏に聞いた。

急成長の背景に「法人カード」を取り巻く環境の変化

「(いくら良いものを作ったとしても)波がなければなかなか前には進みません。良いプロダクトであることは前提にはなるものの、市場が動いていることが自分たちの事業が伸びている最大の理由だと考えています」

宮城氏は同社の成長の背景をそのように説明する。この市場の動きとは「法人カードをどのような人たちが、どういった用途で使うのか」が大きく変わってきていることを指す。

宮城氏によると、数年前までの法人カードは主に役員レベルの交際費や出張費を支払う際に使われるツールだった。求められる機能も消費者向けのクレジットカードと大きくは変わらない。強いて言えばそこにカードとしてのステータスや出張時の保険、ラウンジが使えるといった付帯するサービスなどに重きが置かれていた。

こうした背景もあり、従来の法人カードは既存のカード事業者が法人向けのサービスとして提供しているものが多い。このニーズ自体は今後もなくなることはなく「市場として残り続ける」というのが宮城氏の見立てだ。

一方でUPSIDERを含む新興のカードサービスは、異なる波に乗っているという。

GoogleやFacebookといったデジタル広告の出稿料、ZoomやSlackを始めとした業務に用いるソフトウェアの利用料、クラウドサービスの利用料、レンタルオフィスの賃料──。こういった料金の支払い手段として法人カードが選ばれるようになってきている。

「これまで法人間の取引には営業担当者がつき、取引ごとにテーラーメイドの提案が行われ、その内容に基づいた請求書に沿って銀行振り込みを通じて料金を支払うという形態が多かったんです。でも近年はSaaSの契約などのように企業間の取引が定型化され、人を介さずにオンライン上で進むようになってきています。支払い方法も月額の従量課金や定額の課金が増えてきており、こういったところでカード決済がデフォルトになりつつある。まさにNetflixのような消費者向けのサービスにおいてカード決済がデフォルトになっているのと同じようなことが、法人間の取引でも起きているんです」(宮城氏)