UPSIDERカードのイメージ。実店舗で使えるリアルカードとWeb決済専用のバーチャルカードの2タイプがある。バーチャルカードはウェブから最短10秒程度で発行が可能
UPSIDERカードのイメージ。実店舗で使えるリアルカードとWeb決済専用のバーチャルカードの2タイプがある。バーチャルカードはウェブから最短10秒程度で発行が可能

用途や利用者が変われば、求められる機能も変わる

用途が変われば、サービスを活用するユーザーの属性も変わる。経営層など、ごく限られた人だけでなく、現場の開発責任者やマーケディング責任者、バックオフィスの担当者など、さまざまな人が法人カードに関わるようになった。そうなれば、必然的に顧客から求められる機能や基準も変わってくるだろう。

たとえば“与信額”はわかりやすい例だ。「これまでとは1桁、2桁大きい金額を(法人カードで)支払うようになる」(宮城氏)ことで、従来よりも高い限度額が求められる。特にスタートアップは従来の基準では事業の成長スピードに限度額の拡大が追いつかず、カードの用途が制限されてしまうことも多かった。

“会計処理のしやすさ”も重要な論点だ。「どの部署の、どのメンバーが、何のためにカードを使ったのか」を管理できなければ、決済後の会計処理の負担が大きくなってしまう。カードに関わる部署や社員が増えるほど、支出管理を効率化する仕組みが必要になる。

“内部統制”の観点からも、カードの用途や利用履歴をしっかりとコントロールできる機能は欠かせない。さまざまな人が自由気ままにカードを使えてしまう状態は「お母さんが小さな子ども全員にクレジットカードを渡すのと同じようなこと」(宮城氏)だからだ。

このような法人カードを取り巻く環境の変化は、フィンテック企業にとって新たなビジネスチャンスをもたらした。

ニーズが大きい反面、現段階では明確な勝者もいない。実際に国内ではUPSIDERやHandiiといったスタートアップだけでなく、freeeやマネーフォワードのような上場企業もそれぞれのアプローチからこの領域に参入している。直近では「バクラク請求書」などを手がけるLayerXも、年内を目処に法人カードの提供を始める計画を明らかにした。

上場のための法人カードとしてスタート、1000社以上の顧客が活用

UPSIDERのカードとサービス画面のイメージ
UPSIDERのカードとサービス画面のイメージ

UPSIDERは宮城氏と水野氏が2018年に共同で立ち上げた。

宮城氏は前職のマッキンゼー・アンド・カンパニー時代から金融業界との関わりが深く、当時から法人カードにまつわる事業者の悩みを聞く機会があったという。一方の水野氏はユーザベースに初期のメンバーとして入社し、NewsPicksの立ち上げやグループ全体のマーケティング責任者を経験。その際に“利用者の立場”から法人カードの課題を感じていた。

そんな2人の原体験も活かしながらプロトタイプを開発し、約100社へのヒアリングを踏まえて改良を加えたのがUPSIDERの原型だ。