一方で今後BNPLの広がりが期待されるオフライン決済においては、「Apply Payの加盟店で利用できる」という点がAppleにとってアドバンテージになりうる。

「ECで広がった仕組みを今後いかに実店舗に持っていくかがBNPLの次の成長ドライバーになります。実店舗でのユースケースが増えれば市場規模自体も大きくなるという観点では(既存事業者にとって)プラスの側面もあるかもしれませんが、かなりの顧客をAppleが獲得する可能性もあります」(伊藤氏)

「デジタルウォレット」「デジタルID」の布石に

また伊藤氏は金融事業にとどまらず、今回の取り組みが中長期的な「デジタルウォレット 」「デジタルID」の実現に向けた足がかりになるのではないかという。

「近年AppleもGoogleも改めてデジタルウォレットの実現に力を入れています。(この取り組みが加速すれば)運転免許証や証明書を読み取ってAppleのウォレット内に格納しておくと、いろいろなサービスに連携して使えるようになる。本人確認が必要となる金融サービスなども、その都度免許証等の本人確認書類を提出しなくても、AppleウォレットのIDとパスワードを入力するだけで、すぐに口座を開設したりもできるでしょう。既存の仕組みとしてはFacebookやTwitterなどのSNSがソーシャルログインのようなものを提供していましたが、これが認証された個人情報をシームレスに連携できるようになることで、実経済でも幅広く使えるようになるイメージです」(伊藤氏)

この世界観を実現する上で欠かせないのが、身分証明書などの重要な情報をサービス内に取り込んでもらうための仕掛けであり、レンディングのような金融サービスがその代表例になりうるというのが伊藤氏の考えだ。

「いきなり(身分証明書などの)個人情報を入れてくださいというのは難しいので、便利な金融サービスなどを実現することが、結果的にデジタルウォレットを提供する上で重要な情報を集めていくことにもつながるのではないでしょうか」(伊藤氏)