そのため、資本金300万円以上、役員も1人の取締役で設立可能な「有限会社」という制度があったんです。ただ、今の若い人たちは有限会社があったこと自体も知らないんじゃないですかね(笑)。その時代と比較すると、会社設立のハードルも低くなり、資金も集めやすくなったなと思います。

また、自分はエンジニアでもあるのですが、エンジニアを取り巻く環境も大きく変わりました。今でこそ“超売り手市場”ですが、2004年当時は真逆の“超買い手市場”。その必要性が世の中にあまり理解されていなかったんです。エンジニア不足が叫ばれる今とは違い、当時はエンジニアの地位もそこまで高くありませんでした。

──そうした状況の中、なぜ起業しようと思ったのでしょうか。

端的に言うと「収入を上げること」が目的でした。先ほども言ったとおり、当時は社会全体でエンジニアの必要性があまり理解されていなかったこともあり、給与水準もそこまで高くなく、年収400万円に届かないくらいでした。また、今と違って副業・兼業といったものもない。今よりも収入を上げるためには独立するしかないな、と思ったんです。

創業から18年を経て、上場──福岡発のベンチャー・ヌーラボ代表が語った、起業の原点と成長の軌跡

当時、2人目の子どもが産まれたこともあり、「とにかく収入を上げなければ」と必死でしたね。個人的にはフリーランスの延長線上に起業があったという感じだったので、世間がイメージする起業家とは少し違うのかもしれません。特に大志もなかったので。

──これまでを振り返ってみて、ヌーラボのターニングポイントとなったのはいつですか。

起業してから18年間でターニングポイントは3つあったかなと思います。まず最初が起業から3年くらいのタイミングです。それまでは「明日の入金、明日の入金……」という感じで、目の前のことに必死で先のことを考える余裕すらもありませんでした。3年が経ったくらいで落ち着き始めたので、そのときに初めて会社が何のためにあるのか、会社をどうしていくべきかという「未来」のことについて考え始めたんです。

当時手がけていた受託開発の事業や開発中だったBacklogのプロダクトの性質を踏まえた上で、自分たちがやりたいのはコラボレーションだと思い、そこで「ヌーラボは『チームで働くすべての人に』をコンセプトに、チームのコラボレーションを促進し、仕事が楽しくなるようなサービスを開発していく会社である」という方向性が決まりました。

創業から18年を経て、上場──福岡発のベンチャー・ヌーラボ代表が語った、起業の原点と成長の軌跡

その次のターニングポイントは2013年ですね。それまでは受託開発と自社プロダクト・Backlogの開発という“二足のわらじ”を履いている状態だったのですが、2013年に受託開発の事業を完全にストップし、自社プロダクトの開発に専念することを決めました。そこから今のヌーラボがスタートしたな、と思っています。