正直、新しいツールが登場する度にちょっとした恐怖心を抱えていました。やっぱり新しい方が華がありますし、何かと話題になるじゃないですか。それこそ昔は「話題が大きい方がいいんじゃないか」と思っていたこともあるのですが、話題になったとしても、サービスの質が良くなければ話題にもならなくなってしまう。

それを踏まえると、話題にしてもらうことが正しい戦略ではないなと思いました。だからこそ、ヌーラボは顧客視点を何より重視し、彼らの声をもとに一緒になって開発を進めています。その結果として、ヌーラボのサービス自体も伸びているので、戦い方は決して間違っていないんだなと思います。

──今後のコラボレーションツールの市場をどう見ていますか。

競合ツールを比べてみても、圧倒的な違いはないと思っています。だからこそ、今後3〜5年の間に従来のコラボレーションツールのあり方を変えるようなアップデートが起きるのではないかと思っているので、変化に対するアンテナはきちんと張っておきたいと思います。

創業から18年を経て、上場──福岡発のベンチャー・ヌーラボ代表が語った、起業の原点と成長の軌跡

「スタートアップ都市ふくおか宣言」から10年の節目を迎えた、福岡のスタートアップ・エコシステムの変遷

──ヌーラボは福岡市発のスタートアップでもあります。福岡は2012年の「スタートアップ都市ふくおか宣言」の発表から10年の節目を迎えました。橋本さんは、福岡のスタートアップ・エコシステムの変遷については、どのように捉えていますか。

この10年で起業のハードルもグッと下がりましたし、「福岡のスタートアップです」というだけでそれなりに注目してもらえるようになった。ゼロからイチを生み出していくための土壌はかなり整っているのではないかと思います。

その一方で課題もあります。それが採用です。組織の規模がある一定レベルまで達し、コーポレート系の人材を採用しようと思っても、そもそも人材がいない。例えば、CFO(最高財務責任者)の採用難易度はかなり高いと思います。IPOを経験したことがある人が福岡にはいないので、採用まわりはまだまだ課題が多い印象です。

そういう意味では、ヌーラボが上場したことで経験者として相談に乗ることができるようになりました。また、バックオフィスの人たちも参考になる記事のURLを送るといった形式的なアドバイスだけでなく、実体験をもとにアドバイスができるようになった。IPOを目指す福岡のスタートアップに対して、貢献できるようになったのかなと思います。

──橋本さんは今後、ヌーラボをどうしていきたいと考えていますか。

ヌーラボはチームのコラボレーションを促進し、仕事が楽しくなることに対して貢献をしていきたいと思っています。BacklogやCacoo、Typetalkといったサービスが仕事を楽しくする燃料となり、もっと多くの人に使ってもらえるようにしていきたいですね。