最後が2017年に1億円の資金調達を実施したときですね。ユーザー規模を拡大していくためにヌーラボ自体がもっと変わっていかなければいけないと思っていたタイミングでした。資金調達をしたことで、その覚悟も決まりましたし、そこから上場も意識し始めました。

コミュニティから生まれ、コミュニティで伸ばしてきたヌーラボ

──Backlogを筆頭に、ヌーラボはユーザー規模を着実に拡大させ、成長を遂げていった印象です。振り返ってみて、成長の鍵となったものは何だったのでしょうか。

コミュニティ──この一言に尽きますね。もともとヌーラボ自体も、Java言語の勉強会などを行うプログラミング言語のコミュニティ「Mobster(モブスター)」の仲間たちと一緒に立ち上げました。2005年6月にBacklogのベータ版をリリースしたときも、周りのエンジニアコミュニティに「こういうツールをリリースしたんだけど、どう?」という感じで見てもらったり、使ってもらったりすることで、サービスを改善していきました。

そして、Backlogのユーザー規模が拡大してくると、「JBUG(ジェイバグ)」というBacklogユーザーのコミュニティが生まれ、そのコミュニティがユーザーを増やしていくきっかけにもなってくれています。そういう意味では、ヌーラボ自体も会社というよりかはコミュニティのような集まりですし、サービスもコミュニティの力を使って伸ばしていくことができた。これまでコミュニティに支えられてきたな、という感じですね。

創業から18年を経て、上場──福岡発のベンチャー・ヌーラボ代表が語った、起業の原点と成長の軌跡

──橋本さんの感覚的に想定どおりのスピードで成長することができましたか。

想定していたよりも時間はかかっていますね。それこそ、17歳か18歳のときに自分の人生のストーリーをノートに書いているんですけど、そこには「40歳のときにリタイアする」という予定が書いてあるんです。46歳になった今、会社が上場し、これからもっともっと頑張らないといけない状況になっているので、それを踏まえると想定どおりではないですね。

ただ、急がば回れじゃないですけど、急速に成長すればいいという話でもないと思いますし、結果的には良かったのかなと思います。

──この十数年間でコラボレーションツールの数もかなり増えた印象です。

すごく増えたと思います。自分たちがBacklogをリリースした頃は、社内にサーバーや通信回線、システムを構築し、自社で運用を行う「オンプレミス型」が一般的で、「クラウドはなんとなく怖い」と思われていたのですが、少しずつクラウドが世の中に受け入れられるようになり、それに合わせてプレーヤーの数も増えた印象です。