1トークン=1票である限り、買われるトークン数が増えるたびに、その分投票権が購入されていることを意味する。

実際に2022年2月にはTron(トロン)というブロックチェーンを運営する起業家のジャスティン・サンのものではないかと見られるウォレットが、10億円程度のCompoundプロトコルのガバナンストークンCOMPを取得しているという疑惑が報道された。

この投票権大量獲得が彼の仕業であったのか、明確な答えはないのだが、その後「Tronのブロックチェーンで用いられているアセットをCompound の中で使うべきである」という内容の提案がすぐにされており、関係性が疑われている。

このように貴重なDAOの1票がマーケットで誰でも買える状態は、特定の資産家や資産保有者が、一気に投票行動やDAO内のホルダー分布を歪めてしまう可能性を表明化させている。

DAOの解散

また、DAOには場合によって「解散されるという概念がありえるのではないか」と話題になってきている。2022年に「DAOの解散が提案されている」として話題になったのがApe DAOである。

亀井聡彦・鈴木雄大・赤澤直樹共著『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(発行:かんき出版)
亀井聡彦・鈴木雄大・赤澤直樹共著『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(発行:かんき出版)

Ape DAOは Bored Ape Yacht ClubのNFTを80体以上保有するDAOであるが、Ape DAOは所有NFTを裏付けとして独自のトークンをも発行していた。

本来DAOが発行している自前のトークンの価格の総合計は、常に裏付け資産であるDAOで保有しているNFT作品の市場価格の総額とイコールであるべきなのだが、このApe DAOのケースではDAOで保有しているNFTのマーケット価値の総数が、DAOが自前で発行しているトークンよりも高額となってしまったという、価値の逆転現象が発生したのだ。

これが原因となり、DAOを解散してすべてのNFTを売り払ってしまい、その利益をトークン持ち比率に応じて配布しようという、攻めた提案が検討されたことが所以である。

このようにDAOが機能不全に陥ると、裏付け資産がある場合によるが、DAOの解散が検討されることが判明した。

DAOの乗っ取り、解散などはまだまだ問題として出始めたばかりであり、既存の株式会社などで行われたものと同じような方法で、特定の投票行動などに影響を及ぼす可能性がある。

しかしながら、さまざまなDAOへの挑戦とも思えるガバナンス攻撃(攻撃の意図が明確でない場合もあるが今回は攻撃と記す)などに対して、そのようなDAOの機能不全を起こさないように防御していくための試行錯誤は高速で行われており、まさにWeb3スピードで進行している。