家族と一緒に暮らしていると、ビデオ通話や音声通話によるカウンセリングには抵抗があるがテキストチャットなら使いやすい、という理由でUnlaceを活用するユーザーもいる。実際に課金して利用しているユーザーの約半数はこれまで通院経験がなかった人たちで、相談内容の多くはプライベートに関するものだという。

しばらくサービスを運営していると、「漠然と相談したいという思いは持っているものの、具体的にどのようなかたちで相談をすればいいのかが分からず一歩踏み出せないでいる人たち」が一定数存在することがわかった。

そこで新機能として取り入れたのが、学術論文を基に心理状態を無料で診断できる仕組みだ。オンライン上の診断コンテンツを通じて眠りの状態やストレスの状態、認知の歪みなど自分自身を客観的に分析できるのが特徴。今では毎月約1万件の利用があるという。

心理診断などの無料サービスも含めると、サービスの登録者数は2021年6月から2022年6月にかけて約500%増加しており、「オンラインカウンセリングの需要は確実にある」と前田氏は話す。

日常の延長線で使ってもらえるメンタルヘルスケアサービスへ

Unlaceではこの6月にサービスデザインのリニューアルを実施した。オンラインカウンセリングや診断機能は残しつつも、“セルフケア”を後押しする仕組みの第一弾として「ジャーナリング」機能を新たに組み込んだ。

これは日記の延長のようなかたちで日々の出来事や感情を記録していくことで、結果として認知行動療法の効果を得られるというもの。メンタルヘルスケアのために認知行動療法を新しく始めるのではなく、「日々の生活で既に行っていることに少し取り入れるだけで症状の改善につながる」ことを目指している。

ジャーナリング機能のイメージ
ジャーナリング機能のイメージ

「オンラインカウンセリング自体の需要を感じている一方で、依然としてまだまだ敷居が高いとも感じています。いろいろな角度から試行錯誤する中で気づいたのが、(カウンセリングの)非日常性が課題の本質なのではないかということ。ただでさえ精神的に辛いと感じている時に、オンラインカウンセリングで相談するという新しいことに取り組むのは大変です。(解決しなければならない課題は)スティグマだけではないと気付きました」(前田氏)

Unlaceとしては今後「シンプルなオンラインカウンセリングサービス」から「日常の延長線で使ってもらえるメンタルヘルスケアサービス」へと拡張する方向で機能の拡充を進めていく計画。今回の資金調達もそれに向けたものだという。