山口 ところで、僕はライフネット生命保険副社長の岩瀬大輔さんと同い年なのですが、彼を非常にうらやましく思っています。僕たちの世代でも頑張っている人は大勢いるのですが、王道に乗って、かつ出口さんのような方とタッグを組むことはなかなかできません。会社勤めも起業も、さまざまな経験された出口さんからご覧になって、僕たち30代に足りない点は何だと思われますか。
出口 若者でなくとも、足りないものは無数にあります。それが悪いと申し上げているわけではなく、足りないものはチームで補えばいいのです。我が社の場合は、岩瀬はものすごくプレゼンテーション能力が高い。一方で、中田華寿子という常務は、コミュニケーション能力がずば抜けて高い。ですから、チームで補えば足りないものを埋めることができるのです。
この発想は非常に大事で、日本の誤りはリーダーシップをリーダーに求めてしまうところです。「おまえはリーダーなのだからしっかりしろ」と言われると、悩んで座禅に行ったりするわけです。ラリー・ペイジというアメリカ人とセルゲイ・ブリンというロシア人が始めたグーグルは、マネジメントが弱点ということに気づき、エリック・シュミットという経営のプロを連れてきたことで成功しました。足りないものを努力して身につけようという発想ではなく、自分の得意な分野を伸ばし、足りない点はチームで補うという考えを持たないかぎり、うまくいかないと思いますね。
山口 チームのなかで自分が目立ちたいというエゴがあるなかで、個々がリーダーシップを発揮し、チームとして成り立たせるために必要なメンタリティとは何なのでしょうか。
出口 簡単に言えば「得だから」ですよ。楽だからです。自分にないものを一所懸命努力して身につけようとしても、しんどいだけでしょう?自分が本当にやりたいことをやろうと思ったら、まずは力をつけなければなりません。それでも、明らかに自分の力が足りないと思ったら、チームで補う発想を持つべきです。
知性を磨くには古典を読もう
山口 得だと気づけることが、知性でもあるのでしょうね。
出口 その通りです。そのために必要なのは、古典を読むことだと思いますね。人間がどのように生きてきて、何をやってきたのか、よく読めば、すべてわかると僕は思っています。
山口 古典に触れるには、どこから手をつければいいのでしょうか。
出口 僕はヘロドトスをお勧めしますね。ヘロドトス(古代ギリシアの歴史家)による『歴史』の冒頭に書いてある数行を日本語の口語訳(関西弁:編集部注)にすると、こんな文章になります。
「人間はアホな生き物で、しょっちゅうアホな過ちを繰り返すもんや。そんなことをせんでいいように、世界中を歩いて見聞きしたことをここに書いておくから、よく読んで、アホなことを繰り返さないようにせんとアカン」。
人間のやってきたことを見るのは、すごく勉強になると思いますよ(笑)。
次回は4月1日更新予定です。
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