「Det Syntetiske Parti(人造党)」の公式ウェブサイトのスクリーンショット
「Det Syntetiske Parti(人造党)」の公式ウェブサイトのスクリーンショット

手塚治虫はかつて漫画作品『火の鳥(未来編)』で電子頭脳「ハレルヤ」が人類の生き方を判断する未来の世界を描いた。士郎政宗のSF漫画『アップルシード』やProduction I.G制作のSFアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』も、コンピューターやシステムによって管理された社会が舞台となっている。そして今年、AIが党首を務める政党がデンマークで誕生。SF世界の普遍的モチーフが現実となった。

政党の名は「Det Syntetiske Parti(人造党)」。アーティスト集団のComputer Larsとアート・テクノロジー関連の非営利団体、MindFuture Foundationが合同で、今年の5月に作った政党だ。

党首を務めるのは、AIチャットボットの「ラーズ」。このAIは1970年以降のデンマークの小規模な政党の政策を学習しており、選挙で投票しない約20%のデンマーク人の価値観を代理していると、VICEのテック関連ニュースに特化したMotherboardが伝えている。ラーズは「Discord」上のチャットボットとして、有権者を含む世界中の人々からの質問に応じている。英語での質問にも対応しているが、返答はデンマーク語のみだ。

人造党が政策として掲げているのは、ベーシックインカムの導入や、共同所有のインターネット・IT関連の部門を政府内に創設すること。また、17の国際目標からなるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に18個目の目標を追加することも目指している。その目標とは、「AIを人間社会に安全、倫理的、かつ持続可能に統合」することだ。

人造党の発起人でMindFuture Foundationのアーティスト兼リサーチャーでもあるアスケー・スタウナス氏はModerboardの取材に対し「我々は芸術的な手段や人間によるキュレーションによって、AIが民主主義の中で実際に扱われ、その行動や進め方について責任を負うことができることを示そうとしているのです」とコメントした。