HiCustomer代表取締役の鈴木大貴氏
HiCustomer代表取締役の鈴木大貴氏

カスタマーサクセスの支援・管理向けプロダクトを開発するHiCustomer。6月には自社のハードシングスを語るnoteがスタートアップコミュニティで話題にもなっていた同社が、新事業の展開を加速する。同社はアーキタイプベンチャーズ、Cygames Capital、ココナラスキルパートナーズ、East Ventures、ウェルディレクションおよび個人投資家から第三者割当増資で8200万円を調達。累計調達額は3億円となった。

2017年創業のHiCustomerは、もともとカスタマーサクセス支援のためのSaaS「HiCustomer」を展開。IT系上場企業も含めてサービスの導入が進んだが、事業は停滞。eNPS(Employee Net Promoter Score:従業員のエンゲージメント度合いを「10」から「−10」までで計る指標)は最低の「-10」になり、最終的にはエンジニア1人を残して全員が退職するまでの組織崩壊を経験したという。

代表取締役の鈴木大貴氏はもともとベンチャーキャピタリストだったが、後に起業家となったキャリアを持つ。上述のnoteでは、目標設定ミスや早すぎる権限委譲、顧客セグメント精度の低さなどを組織崩壊の理由として分析。その上で、失敗原因をチームへオープンにし、会社の存在理由の言語化、開発プロセスやドキュメントの整理、小さな成功を祝うことで組織のリズムを作る、さらにコンサル事業でマネタイズして、会社としての再起を図ったと語っている。

同社が現在主力として手がけるのは、2つ目のSaaSプロダクトとなる「Arch」だ。カスタマーサクセスの支援をする中で気付いた課題である「オンボーディング(ここでは、新たなSaaSプロダクトの契約前後における、導入、運用のためのサポートのこと)」の支援を目的としている。

Archの導入企業(SaaS企業を想定)は、自社プロダクトの導入を検討するクライアント企業に対して、専用のカスタマーサクセス向けページを作成できる。ページ上では資料の共有や導入後の進捗管理などが可能となっており、「せっかくSaaSを導入しても利用していないために解約する」といったことを避けることができる。適切な運用を提案することで顧客に対するSaaSの価値を高め、利用を継続させることをねらう。