zeroboardのベータ版も前職のA.L.I. Technologies時代に立ち上げたものだ。企業からの引き合いが増える中で事業の柔軟性やスピードを重視し、2021年9月にMBOを実施。新たな体制で再スタートを切った。
「プライム市場では気候関連財務情報の開示が求められる流れにおいて市場が急拡大することに加え、2020年代半ばを過ぎると中小企業も含めて少なくともScope1、2(自社による直接排出、または他社から供給されたエネルギー使用による排出)に関しては開示しなければいけない、もしくは把握しないと自社の(温室効果ガス)排出量を抑制できない時代になると見込んでいました。財務諸表と同じように全ての企業が算定をしていくようになれば大きなマーケットになりますし、既存のソリューションがないことからほぼ全てをクラウドサービスが占めるだろうと考えていたんです」(渡慶次氏)
渡慶次氏によるとサプライチェーン排出量の算定が難しい産業は課題が大きく、その代表格が製造業だ。
自社製品に関わる会社が増えるほどScope3(調達原材料や資本財などを含む上流や製品輸送・使用・廃棄を含む下流での排出)の算定のために収集しなければならないデータも増える。ゼロボードでは従来、メールを使って各社と進めていたデータ収集に関するやり取りがクラウド上で完結する仕組みをソフトウェアに実装。脱炭素領域の専門人材によるサポートと組み合わせ、顧客の脱炭素経営にまつわる課題解決を進めてきた。
直近では「製品やサービス単位で排出量を可視化したい(カーボンフットプリント)」といったように「可視化のニーズが高度化」してきており、関連する機能開発やルールメイキングにも取り組んでいるという。
またScope3までの可視化という観点では、業界構造が複雑な物流や建設なども難易度が高く新たな解決策が求められている。ゼロボードとしては業界のリーディングカンパニーとタッグを組みながら、業界特化型のプロダクト開発も始めた。建設向けの「zeroboard construction」は2月より竹中工務店の現場で導入をスタート。物流向けの「zeroboard logistics」も2023年中のリリースを見込む。
冒頭でも触れた通り、CO2排出量の算定や削減を入り口として企業の脱炭素経営を支援するサービスはニーズが高まっており、国内外でプレーヤーが増えている領域だ。