日本でもゼロボードのほか、アスエネやbooost technologiesなど複数のスタートアップが参入。「Sustana」を運営する三井住友銀行や、100%子会社のe-dashを立ち上げた三井物産など大手企業が関連するサービスを手がける例もある。

急速に広がる市場で一早く事業をスタートできたことはゼロボードの成長の要因の1つだが、それに加えて初期から「パートナーと一緒に面を取る戦略を進めてきたこと」が事業拡大につながったと渡慶次氏は話す。

「単なる販売代理店ではなくて、排出量可視化のソリューションを自分たちの顧客に提供し、その上で脱炭素のビジネスを大きくできるような会社を探していました。zeroboardのユーザーに対して我々が全てのソリューションを提供することは難しい。自分たちはあくまで(排出量の)算定とそのデータを活用する中立なプラットフォーマーになることに徹して、さまざまなパートナー企業に脱炭素のソリューションを提供してもらうという方針を掲げていました」(渡慶次氏)

電力・ガス、総合商社、自治体、金融の4つを注力領域としてパートナーのネットワークを構築し、現在のパートナー数は100社を超える。今回の資金調達でも複数の事業会社が投資家として参画した(以下は投資家の一覧)。

  • Keyrock Capital Management
  • DNX Ventures
  • インクルージョン・ジャパン
  • ジャフコ グループ
  • DBJキャピタル
  • Coral Capital
  • 長瀬産業
  • 関西電力
  • 三菱UFJ銀行
  • 岩谷産業
  • 豊田通商
  • 住友商事
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ
  • オリックス
  • みずほキャピタル
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • デライト・ベンチャーズ
  • U3イノベーションズ

「顧客になりうる企業に関しては上場企業だけで数千社存在しますが、この領域におけるパートナーは数が限られている。だからこそパートナーといち早く、どれだけ深い関係性を築けるかを重視しながら取り組んできました」

「主要な機能などソフトウェアの部分はどこかで(同業他社から)キャッチアップされると思います。今後自分たちにとって重要になるのが、いかにネットワークを作れるか。データの連携先が増えるほど顧客の利便性も高まりますし、他社へ乗り換えにくくなる。これが1つのMoat(モート : 競合優位性)になると考えています」(渡慶次氏)

ゼロボードでは今回調達した資金を活用しながら組織体制を強化するほか、パートナーとの連携も広げながら国内での事業を拡大する方針。すでに言語対応を開始しているタイを始め、日系企業が多く進出する地域を皮切りに海外展開にも力を入れていくという。