今の若手は本当にうまい。自分たちが若手だった頃とは比較にならないくらい上手です。19歳でこれだけプレーできれば、あとは意識と環境次第でもっと伸びると思います。

――例えば、Jリーグとドイツ・ブンデスリーガなら、環境として若い選手にどちらを勧めたいですか。

どちらもいいですよ。部活があって、ユースがあって、大学があって、と幅広く続けられるのが日本のいいところです。ドイツは上にいけばいくほど狭き門ですが、練習で良いプレーをしていればすぐにブンデスリーガ1部でもスタメンです。

僕は以前、日本の環境を「ぬるい」と言ってしまったのですが、環境が違うと言い直したいですね。確かにヨーロッパに比べたらぬるいけれども、それはそれで良い部分があります。

ぬるい、と言ったのは特に意識の部分です。ドイツでは目の前の選手より良いプレーをすれば、自分がスタメンを奪うことができるという意識で若い選手が練習に臨んでいます。年齢は関係ない。日本では、同じポジションを争う選手がチームの中心なら、例えば若手の間は別のチームに移籍して、経験積んでからまた戻って、となりがちですよね。

でも、日本のような環境だから伸びる選手もいますから、一概にぬるいから悪いとは言えません。ただ、忘れてはいけないのは、ヨーロッパがサッカーの中心にあるということです。

――現場に戻りたい、という思いはありますか。

今はあまり責任がある立場にないので楽しいですけど、コーチや監督が仕事になったら大変だとは思います。相当な覚悟がいるでしょうね。

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要所を押さえて、自分の色を出す

――さまざまな監督と接してきたと思いますが、内田さんが心がけてきたことはありますか。

要所では監督の要求に応えて、監督のやりたいことをある程度理解しつつ、最後は自分の判断で、自分の色を出そうと考えてきました。僕自身、体が特別大きいわけではないし、一人、二人抜いていけるプレーヤーではないです。

ピンチの場面を早めに察知したり、攻撃では相手が嫌がることを考えたりして、気が利くプレーをするというのは心がけてきました。行かなくていいなら行かない、動かなくていいなら動かない。がむしゃらにやるよりは、要所を押さえるということですね。

――海外でもそこは変わらないですか?

変わらないですね。最初は言葉もしゃべれませんし、態度であらわすしかない。最初は気持ちが見えないと言われましたけど、ちゃんと試合に出て、チームが勝てば、言葉が通じなくても認めてもらえる。