そこで組織を柔軟に変化させる仕組みのひとつとして、3つの雇用区分が導入された。また事業環境の転換期にバッファとなる仕組みとして、アクティブメンバーに加えてコミュニティメンバーが参画するカンパニーコミュニティが取り入れられた。

「スマートフォンサービスでは、ダウンロード数とアクティブユーザー数が違うのは当たり前のこと。会社も、事業や個人の状況に応じて、アクティブに関わるときと緩やかにつながっているときがあってもいいのではないかと思うのです」(松村氏)

「正社員としての雇用が守られていないという批判はあるかもしれない」としながら松村氏は「参加メンバーの自己選択と意欲があって、(企業とメンバーの)ギブギブがあれば成立すると思う」とWIDEについて語る。

WIDEは「Working Individuals with Dynamism and Enthusiasm」の頭文字。「ダイナミックに、熱中しながら働く個人の集合である」という、空の宣言でもある。

「スタートアップ採用では『フルタイム or not』みたいなところがあって、ストックオプションなどの関係からもフルコミット型の働き方は多いのですが、フルタイムでなければという思い込みが今までの“もったいない”別れを生んでいたのではないかと感じます。もっと広く、多くの才能を持つ人と仕事ができる方法として、たとえばあるプロジェクトだけ参加するという働き方もアリなのではないかと考えます」(松村氏)

業界特化型から業界横断型SaaSに生まれ変わったMagicPrice

ダイナミックプライシングサービスの他業界への展開は、小規模ではあれ、少しずつ進められてきた空の“野望”だ。だが、今回の高速バス座席予約システムへの導入は、今までの積み上げの延長線上ではないと松村氏は、こう宣言した。

「MagicPriceは、ホテル業界に特化したバーティカル(垂直型)SaaSから、ホリゾンタル(水平型・業界横断型)SaaSに生まれ変わりました」(松村氏)

これまでは他業界へのMagicPriceの応用には、スクラッチに近い個別開発が必要だったのだが、今回発表したものは同じプロダクトでバス業界以外にも展開できるという。

「プライシングサービスは業界ごとの個別性が高く、横展開は難しいと言われてきましたが、コロナ禍を機にホリゾンタルにできることを発見しました。同業界での事例を増やすとともに、今まではプライシングが取り入れられてこなかった業界にも今後は展開できるようになるので、今はとてもワクワクしています」(松村氏)