「才能が今の仕事よりもあふれ出ている人に企業が提供できる『幸せ』とは、そういった意義を提供できることです。昔は資本家と労働者の上下関係から始まり、昨今はフリーランサーと会社の関係に見られるようなフラットなアライアンスによるフェアな契約関係へシフトしてきました。その次に来るのは、ミッションによってひも付いた『同志』の関係。上下でも契約でもなく、全員が同じミッションを実現したいという意欲で集まる個人の集合として、会社は再定義されるはずです」(松村氏)

「コロナ禍をきっかけに、こうした個人と企業の関係性を具現化するにはどうすればいいか、一気に考えが加速しました。また、この考え方に共感してくれる人が増えた年でもありました」という松村氏。多くの人が働き方や仕事について考えたタイミングでもあったため、コミュニティを始めることができたと振り返る。

カンパニーコミュニティの初期メンバーには、松村氏の古くからの友人で、ともに仕事をしたことはないけれども応援したい気持ちを持つ人たちや、空のアルムナイなど、10名弱が参加している。メガベンチャーや大企業で活躍する人や、独立して事業を営むメンバーらが、副業のひとつとして緩やかに関係性を持つ。

「空のミッションに共感し、小さなスタートアップのスピード感やダイナミズムが感じられる流れの中に入って、貢献することが楽しいと感じる人が来てくれています。企業なのでビジネスをやっているんですけれども、人間は感情で幸せかそうじゃないかが決まっていくもの。エモくてもいいんじゃないか、思いや夢をビジネスの仕組みに入れてもいいんじゃないかというのが、自分たちのコンセプトでもあります」(松村氏)

空の新人事制度「WIDE」について説明する松村氏
空の新人事制度「WIDE」について説明する松村氏

夢や思いの実現と同時に、松村氏にとってはビジネスのシビアな側面からも、新人事制度WIDEへのバージョンアップは必要なことだった。

「新人事制度をつくった背景には、起業家としての挫折や怖さを経験したことがあります。市況が変わって挫折や反省が残ったし、やり方次第でチャンスは拡大するけれども、フレキシビリティーの下がる投資は怖いと思うようになりました。乱高下はまた起こると思います。優先順位をどう変えなければならないかは読めませんが、変わることは確かです。そのときに組織として対応できない、または、対応しようとして大きなショックが起きることは避けたい。昔ながらの方法で人を集めるのは怖いんです」(松村氏)