社内に枠組みを提示した結果、もともと正社員だった十数名の多くはドライバーとして無期契約を結び、週に1度のコア曜日に出社する働き方を選択した。一方、コラボレーター、ランサーとして有期契約または業務委託契約へと変更し、完全にリモートで働くことを選んだ人も、それぞれ数名ずついたそうだ。
家族の都合で、故郷でフルリモートで働くことを選択し、「空から離れるのではなく、関わったまま、新しい働き方を選べた」と新制度を歓迎している人もいる。
新雇用区分は松村氏のアイデアから生まれ、人事担当者や社会保険労務士と相談し、現状のルールでできることを確認しながらつくったという。
松村氏は「まだまだベータ版だと思っているので、今後も見直しは行っていきます。新たに4つ目、5つ目のフレームもできるかもしれません」と話す。
ミッションに共感する外部メンバーによるカンパニーコミュニティ
WIDEの特徴の2つ目は「カンパニーコミュニティ」を設定したことだ。これは、雇用契約や業務委託契約を結んだメンバーとは別に、貢献意欲の高い外部の人たちから成るコミュニティだ。入社に至らなかった採用候補者や退職した社員(アルムナイ)、業務委託として携わったメンバーなどがそこには含まれる。
松村氏は以前からこのようなコミュニティを形成したいと考えていたそうだ。ヒントとなったのは、Googleによるスポンサーのもとで開催された月面無人探査コンテスト「Google Lunar X Prize」に、探査ローバー開発で参加したチーム・HAKUTOの活動だ。
「HAKUTOにはプロボノ(ボランティアとして自身のスキルを提供する専門家)が多く参画していました。参加の動機はプロジェクトに貢献したい思い。金銭的な報酬ではなく、プロジェクトにかける時間の面白さや意義に立脚したコミュニティでした」(松村氏)
コロナ禍以前から松村氏は「働くことや生きる上での、欲求が満たされた幸せは、だんだん得づらくなっていると感じていた」と語る。
「仕事をして、ある程度不自由なく生活できるようになったら、人は次に何を考えるか。人生をかける意義や価値がその仕事にあるかどうかが問われるようになります。そこでは、自分が大きなミッションに貢献できている感覚が内発的モチベーションになる。それも達成したときの達成感よりも、そこへ向かっている日々自体が人生を豊かにしてくれると、自分自身の感覚としてもそう思うのです」(松村氏)
さらに松村氏はこう続ける。