「僕はこのやり方でやりたいんだけど、一緒にやりたい人はいますか」と世界中で言って回っている感覚ですね。やっぱり、会社の原動力になるのは、一人ひとりの情熱。同じ思いを持って同じゴールを目指せる人をサークルメンバーにしていくことが僕の役割だと思っていますし、それぞれの持ち味や強みを伸ばすことに時間を使える会社でありたい。結果的には、Indeedの初期メンバーは今もほとんど残ってくれているのは嬉しいですね。

逆に、もしも違和感があるならいつでも辞めてくれて大丈夫だとも伝えています。その人の能力や持ち味が最も発揮できる場がここではない他にあるであれば、そっちで頑張ってくれるほうが、本人、会社、世の中の3者にとってハッピーじゃないですか。会社と個人の関係は、本来そうあるべきだと思っています。

紙媒体のネットシフト、Indeed買収──リクルートの新社長・出木場久征氏が語る「成果を出す思考法」
 

 

──働き方、そして個人と会社の関係について強い思いを感じます。

僕も若い頃から「いつでも辞められる自分でいたい」と思っていました。実際、今日辞めても生きていけるという実感があれば、思ったことをなんでも生意気に言えるようになるんですよ。親父から教わった「肉魚戻れないの法則」というのがあって、「いい肉、いい魚の味を覚えたら、二度と安い肉には戻れなくなる」と。

確かにそうだなと思って、若い頃は生活費を倹約しました。西葛西の家賃12万円のマンションに家族で住んで、食費は2万円に切り詰めてもらって。この生活を維持できれば、いつ会社をクビになっても生きていけるだろうと思えていたから、先輩や上司にも「こんなのあり得ませんよ!」と言いまくれたわけです。

新入社員時代も日報を書くのを3日で諦めて上司にめっちゃ怒られましたけれど、「本当にできないので、すみません」と言っていました。それでクビになるなら仕方ないし、そのための準備として生活費の節約。おかげで妻も節約グセが染み付いていて、役員になった後に移ったアメリカで「久しぶりに山芋を食べたいな」と言ったら「無理。5ドルもして高いんだから」と返ってきました(笑)。

「ボタン1つで仕事に就ける世の中」とは何か

──今後もHR事業に注力し、「ボタン1つで仕事に就ける世の中を目指す」という方針を打ち出しています。どんな未来をイメージしていますか。

全然難しいことは考えてなくて、「もっとこうだったらいいのに」と思い描けるものを実現したい。例えば、宮本さん(筆者)は今フリーランスとのことですが、その前はどこかに勤めていましたか?