Photo:SOPA Images /gettyimages
Photo:SOPA Images /gettyimages

30年続ける覚悟でやれば、成功しないビジネスはない

──多くの人は「確実にできそうなことからチャレンジする」という癖がついてしまっているのかもしれません。今見えている風景から飛躍した未来を描いて、そこに挑む。そのために何が必要だと思いますか。

たとえうまくいかなかったとしても「少し早過ぎたな」と思えばいい。そもそも、失敗と確定するにはスパンが短過ぎる場合が多いと感じますね。10年、20年とやり続けたら、いずれは必ず成功するんですよ。

いかに今の風景のずっと先にある未来を描き、本気でつくれるか。ホットペッパービューティーの予約システムをオンライン化しようとしたときも、顧客である美容室側も現状で満足していて、営業も「予約の99.9%は電話で入る。ネット経由はわずか0.1%。そのわずかの枠のためにシステムを導入してくださいと説得するのは無理」と消極的でした。

だからこそ、「いつ参入するの? 今でしょう」ということです。どこかのベンチャー企業が始めて、他社も始めて、インターネットをみんなが使うようになって、全部お膳立てができてからようやく腰を上げるのでは遅い。だったら、インターネット予約という文化をつくってしまう。ルールチェンジできる側に立ったほうが面白いじゃないですか。

当初はすぐには結果が出ずに、「ほら、何も知らない出木場がいい加減なこと言うから」と悪口を言われましたよ。ホットペッパーの前にやった「じゃらん」も、最初は青森県内で予約できる宿が1件だけというひどい状況からのスタートです。

2003年頃は、そもそもパソコンにネットをつないだ旅館が少なかったですからね。「じゃあ、僕たちがつなげるしかないじゃん」と言って、全国の旅館を回って、まずADSLの説明から始めましたもん。「今、NTTでADSLの2本引きキャンペーンやってますよ。あと、パソコンはジャパネットたかたが安く買えますよ」とか言って、一体どこの営業か分からない(笑)。そうやって地道に即時予約という新しい習慣を旅行業界に広げていったんです。

その後にホットペッパーの部署に移ったら、「出木場さん、美容室はパソコン導入率30%です。100%入っている旅館とは違うんです」と抵抗されて。「いやいや、俺が始めた時は30%以下だったから!」と。できない理由なんてどこにもないって話です。

結果が出るまでには時間はかかりましたけれど、たまたまスティーブ・ジョブズがiPhoneを作ってくれたのが超ラッキーでユーザーが一気に増えました。でも、それは運が良かったのであって、「◯◯年後にはアップルがスマホを作るはずだから」なんて予測はもちろんしていないわけです。30年続ける覚悟でやれば、成功しないビジネスはないでしょう。その間の金回りと、関わる人たちが報われる評価の仕組みだけをセットすればいいだけ。まあ、無責任といえば無責任ですけどね(笑)。