逆ですよ。書いたあとにVoicyでしゃべっています。僕にとってVoicyの『声の履歴書』は「編集後記」みたいなものなんです。徳力さんもブログや本を書いたあとに読者から「読みましたよ」とか「あれ面白かったです」って言われたら、その後に一言足したくなりませんか?「あれさ、本当はこうだったんだよね」とか、「書けなかったことがあるんだけど実はさ……」とか。

僕は、そういうこぼれ話を知ることができる「編集後記」がすごく面白いと思うんです。いわば、CDのA面とB面。A面って、より広範囲の人に届けるためにちゃんと作り切った完成品を入れますけど、B面は自分のより奥深い世界観を見せて、自分の作品世界や作り手自身のことを本当に好いてくれる人をつくるためにある。

声はこのB面を表現するのにとても適しているんです。読み手が文字情報からだけでは感じ取ることができない、発信者のそのときの感情とか感覚が声のトーンやテンポ、ことばの微妙な間などからにじみ出る。そこにこそ、音声メディアの面白みがあると思うんですよね。これこそが、僕がVoicyをやっている大きな理由の一つです。

人がコンテンツに興味をもつとき、一番初めは便利さや面白さにひかれます。発信側がそれら受け手のメリットを長く提供しつづけていくと、受け手はだんだんと発信者のことを好きになって、その人の奥行きまで知りたくなる。

だけど文章で奥行きを出すのは難しいんですよね。また逆に、発信者がいきなり自分の奥行きを全面に出しても、受け手側は困惑するだけ。だから僕は、文章+音声のハイブリッドで発信していくのがいいと考えているんです。

──A面、B面の例え話、よくわかります。一般的なビジネスのシーンにも当てはまるなと思いました。A面だけできちんと取引を行うことはできるけれど、B面が伝わってくる人との方がお互い気持ちよく、スムーズに仕事ができますから。

自分に合うさまざまなSNSを使って自分のB面をうまく出して行けたら、SNSは「普通」のビジネスシーンを生きるビジネスパーソンにとっても、非常に役に立つツールになるといえると思いました。

緒方憲太郎氏
 

ゲスト:緒方 憲太郎(おがた けんたろう)氏(Voicy代表取締役CEO)
大阪で公認会計士として務めた後、海外放浪の旅へ。米国企業、ベンチャー支援企業などを経て、2016年にVoicyを設立。世の中がハッピーになる付加価値の創出を目指す。座右の銘は「迷ったらオモロい方」近著に『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』がある。
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