ユーザーの半数は12カ月後も継続的に利用

Stailerは多店舗展開している小売チェーンのデジタル化を支援するプロダクトだ。消費者向けのモバイルアプリだけでなく、店舗の担当者が使うピックパック(商品のピッキングとパッキング)や在庫管理システム、配送業者向けのシステムなどを自社でまるっと提供している。

Stailerが開発する機能群
 

たとえばスーパーの場合はSKUが多いことに加え、生鮮食品を扱っていることなどから他業界と比べてもECの立ち上げ難易度が高い。10X代表取締役の矢本真丈氏によると「ネットスーパーをやりたいのにそのための手段がない状態で、バーニングニーズ(今すぐにでも解決したい大きなニーズ)になっている」という。

従来であれば複数のシステムベンダーが関与し、複雑な構造になりがちだった部分をStailerでは一気通貫で全面的にサポートしている点が特徴。それによって小売事業者がネットスーパーやECを始める際の障壁を下げているのがポイントで、初期費用をなくし、月額利用料と売上に連動した従量課金制を採用しているのも同様の理由からだ。

イトーヨーカ堂とのネットスーパーアプリを2020年5月にローンチしたのを皮切りに、10Xは合計4社と消費者向けのアプリを運営してきた。矢本氏の話では数カ月〜約1年の月日が経過する中で、特に「リテンション(継続率)とARPU(平均購入額)」において大きな成果が見えてきているという。

Stailerを通じて開発しているネットスーパーアプリのイメージ画像
Stailerを通じて開発しているネットスーパーアプリのイメージ画像

具体的にはStailerを通じて提供するネットスーパーアプリの利用者の翌月継続率が約70%、12カ月後でも50%を維持している状況だ。1カ月の平均購入額も約2万円の数字を保ち続けている。

「(他の分野などと比べても)バスケットのカゴ単価が高く、月の利用頻度も2回〜3回ほどと高い。リテンションの数値も含めて、自信を持ってエンドユーザーに提供できるものが作れてきています」(矢本氏)

イトーヨーカ堂やライフについては以前からウェブ版のネットスーパーを自前で展開しているが、ウェブとアプリでは利用用途やユーザー属性が大きく異なることもわかってきた。

一例を挙げるとウェブ版は圧倒的にPCでの利用が多く、購入頻度が少ない代わりに1回当たりの購入量が多い傾向にある。米や1ダースの飲料、トイレットペーパーなどがなくなったタイミングが典型的な利用シーンだ。

一方のアプリは利用頻度が高く生鮮食品の購入など日常使いが多い。主な利用者層も30〜40代が中心でウェブ版に比べると年齢層が若いといった違いがある。特に生鮮食品は粗利率が高く、スーパーとしては積極的に販売したい商材。そういった点も含めてパートナー企業からの評価も高いという。