現時点で配送領域のオペレーティングシステムについては実運用はスタートしていないが、今後はこちらも含めてより広範囲に小売企業を支援していく計画
現時点で配送領域のオペレーティングシステムについては実運用はスタートしていないが、今後はこちらのシステムも含めて、より広い範囲で小売企業をバックアップしていく計画

他国から遅れる日本の食品・日用品EC化率、小売企業のキャパシティ拡大がカギ

新型コロナウイルスの影響もあり、この1年だけでも世界中で食品・日用品ECの市場が大きく成長した。

ただアメリカやイギリス、中国といった国々に比べると日本のこの領域のEC化率は低く、成長スピードにおいても遅れをとっているため、その差が開いてきている状態だ。

食品・日用品EC化率。この1年でもアメリカやイギリスとの差が広がっているが、一方で日本市場は成長できる余地が大きいとも言える
食品・日用品EC化率。この1年でもアメリカやイギリスとの差が広がっているが、一方で日本市場は成長できる余地が大きいとも言える

そのような市場環境に加えて、消費者が当たり前にネットスーパーのような体験を利用できるかどうかという観点も踏まえて「日本は10年分くらい遅れている」と矢本氏は話す。

「『そもそもネットスーパーにアクセスできるお客さんがほとんどいない』ということに1番強い課題を感じています。都心に住んでいるとそんなことはないと思われるかもしれませんが、少しエリアを移動すれば配送範囲外に当たる人も多い。日本地図で言えば3割程度しか埋められていないのではないかという感覚があり、現状ネットスーパーはマス向けには提供されていないサービスだと捉えています」(矢本氏)

この状況を変えていく上で重要になるのが「小売企業側のキャパシティ(供給量)の上限を広げていくこと」だ。実際に日本では緊急事態宣言下において消費者のニーズに供給が追いつかず、企業にとっては機会損失が発生している状態も続いていた。

「一度利用してもらうというハードルさえ乗り越えられれば、緊急事態宣言など関係なく継続的に使ってもらえるというのが見えてきました。企業はそのチャンスがあるのに逃してしまっている状況です。キャパシティがないという問題を解かない限り、EC化率は上がっていきません」(矢本氏)

Stailerの展開加速へM&Aなども視野に

キャパシティを広げるためには、まさにStailerがやってきたような在庫管理やピックパック、配送などにまつわる課題を1つずつ解決していく必要がある。こうした体制が整備されなければ、そもそも既存の店舗をネットスーパーに対応させることもできない。

中でもピックパックと配送が重要で、地域によってやり方は異なるものの「ピックパックと配送がボトルネックにならないように工夫している国が伸びている」というのが矢本氏の見解だ。

たとえばアメリカではギグワーカーの台頭が大きい。急成長を続ける「Instacart(インスタカート)」はその典型例であり、ピックパックや配送をギグワーカーが担うことで物流面のボトルネックを解消した。そこに小売企業のDXに対する積極的な取り組みなども合わさって、EC化率が高まっているという。

イギリスの場合には小売企業がピックパックから配送までをカバーする機関(マイクロ・フルフィルメント・センター)を自前で設ける動きが主流で、アメリカとは異なるアプローチからオンライン化に対応している。