学習塾の「第一ゼミナール」を展開するウィザスに対して、シンガポールの投資ファンドが株主提案Photo by Kazuki Nagoya

学習塾の「第一ゼミナール」を展開するウィザスに対して、シンガポールの投資ファンドが株主提案を出したことが分かった。大株主である創業者がウィザスの役員を退いた後も、長期間にわたり子会社の代表取締役社長を務めていることを問題視し、連結子会社の取締役の任期を制限することなどを求めている。投資ファンドが指摘する、創業家による「子会社私物化」の実態など“特別待遇”の中身を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

「第一ゼミナール」に株主提案
創業者の「実質的な支配」とは

 学習塾の「第一ゼミナール」を展開するウィザスが6月に開く株主総会に向け、シンガポールの投資ファンドが株主提案をしたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。提案内容は、創業家に対する“特別待遇”の撤廃などが柱。すでに退任している創業者のガバナンスを問題視した株主提案は珍しい。

 ウィザスは、関西を中心に展開する第一ゼミナールのほか、通信制高校の「第一学院高等学校」も運営している。近年は、この通信制高校を含む高校・大学事業が業績をけん引している。2023年3月期の売上高に占める高校・大学事業は40.6%となり、祖業である学習塾事業の34.4%を上回った。

 足元の業績は堅調に推移している。24年3月期の売上高は前年同期比5.3%増の209億円となり、過去最高だった前期を上回る見通しだ。最終利益は前年同期比86.5%増の11億円を計画している。

 創業者で元会長の堀川一晃氏は、ユニークな経歴を持つ。大学卒業後、20代で大阪府内の市議会議員に当選したが、教育の重要性を認識。1976年に学研塾を開校した。87年に第一ゼミナールに改称し、98年には第一高等学院(現第一学院)を運営する学育社と合併。03年に社名を学育社から現在のウィザスに変更した。

 堀川氏は09年に、現社長の生駒富男氏にトップの座を譲って会長に就任。15年に会長を退いた後は、相談役を務めている。堀川氏ら創業家が20%超のウィザス株を保有している。

 今回の株主提案では、その堀川氏や息子で現執行役員の堀川直人氏ら創業家によるガバナンス不全が生じているとして、見直しを求めている。提案は、創業家によるウィザスの「実質的な支配」や「子会社の私物化」に対する懸念を指摘。また、昨年に更新した買収防衛策を巡る創業家への「特別扱い」を批判している。次ページでは、投資ファンドが問題視する創業家の“特別待遇”の具体的な中身について明らかにする。