現時点では対応サービスの数に限りはあるものの、この数が増えるほど飲食店は現場の負担を増やさずに多くのサービスに出店できるようになるため、業務効率化だけでなく販売機会の増加も見込める。

この領域については以前紹介した「CAMEL」を始め、日本でも複数のプレーヤーがサービスを展開し始めている状況だ。Toremoro代表取締役の中野凱仁氏によると、Orderlyでは複数店舗を展開している中堅〜大規模の飲食店をメインターゲットとしており、タブレットの一元管理に限らず「デリバリーオペレーションのDX」を目指していくという。

具体的にはPOSへの二度打ち作業(デリバリーサービスの注文をPOSに手入力で打ち込む)の負担をなくすために複数のPOS事業者との連携を進めているほか、店舗用のアプリケーションに加えて本部向けのダッシュボードも開発。ブランドやデリバリーサービスごとに、各店舗の売上をリアルタイムで把握できるような仕組みを作っている。

Orderlyは月額定額制で、現在は事業規模などに応じて9000円から利用が可能。テスト導入企業も含めて約15社がサービスを導入しており、そのうちの約半数が100店舗以上を抱える事業者だという。

Orderlyが解決を目指すデリバリーマーケットのペイン
Orderlyが解決を目指すデリバリーマーケットのペイン

ゴーストレストランの運営を通じて現場の課題を発見 

もともとToremoroは世界中の音が聴ける音楽アプリ「toremoro」を手掛けるチームとしてスタートした。

創業者の中野氏は父親や親族が飲食店を経営していたことや、両親が個人事業主だったこともあって、学生時代から起業を意識していたそう。BitStarやメタップス、タイムバンク(現・Let)を経て会社を立ち上げ、最初のプロダクトとしてtoremoroを作り資金調達も実施したものの、事業がうまくいかずピボットを決意した。

「振り返ると1つ目の事業は起業ありきで考えてしまっていた部分がありました。だから改めて事業案を考えるにあたっては自分のバックグラウンドなども踏まえ、熱意が持てて、なおかつ10年間戦える領域であることを大事にしました」(中野氏)

次の挑戦の場をフードデリバリーに定めてからは、まずは市場を理解する意味も込めて自分たちでゴーストレストラン(デリバリー特化のレストラン)を運営するところから始めた。

実際にクラウドキッチン(ゴーストレストランが入居するシェアキッチン)に入居し、中野氏自身もキッチンに立って、約半年間ほど飲料ブランドの立ち上げに挑戦した。

最終的にゴーストレストラン事業を本業にすることは断念したものの、それを通じて上述したタブレット問題を現場で感じることができたという。