子育て中のビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

昨今、SNS上で盛り上がりを見せる“子持ち様”論争。育休を取得したり、育休から復帰後も職場を早退したりする子育て中の社員を揶揄するネットスラングだ。子育て中の社員が「子持ち様」として冷遇される組織と、安心して仕事と両立できる組織は何が違うのか。後編となる今回は、子育て社員をめぐる対立を解消する具体的な方法を紹介する。(取材・文/ダイヤモンド・ライフ編集部)

みんなが不幸になっている
“子持ち様”論争の根本原因

「子育て社員をサポートする側は、業務量が増えたり、残業を余儀なくされたりするのに、それが報酬や評価に繋がっていないケースがあります。一方で子育て社員も時短勤務を余儀なくされて、給料が減ったり、キャリアの幅が狭まったりしています。現状では子育て社員も、その周囲もどちらも不幸になっています」

“子持ち様”批判をめぐる現状をこのように分析するのは、「共働き子育て世帯」に特化した転職サービスを提供するXTalent代表の上原達也さんだ。

 子育て社員と受け入れ側が対立してしまう根本的な原因については次のように分析する。

「どんな人にも何らかの事情はあります。それは介護や不妊治療、ペットの病気かもしれない。しかし、こうした事情では会社を休むことができない。それなのに、子どもの事情なら休むことができるのであれば、子育てが“特権化”されていることになります」(上原さん)

 子育て社員を含むすべての社員が抱える個別の事情を理由に休むことができるシックリーブ(有給病気休暇)や突発的な事情にも対応できる時間休のような「制度」を整えることは、対立解消の前提条件となる。

 しかし、制度すら十分に整っているとは言えないのが現状だ。勤務先に「テレワーク制度等が導入されている」就業者の割合は37.6%(令和4年度 テレワーク人口実態調査 - 国土交通省)、病気休暇を導入している企業は21.9%(令和5年就労条件総合調査 - 厚生労働省)、時間単位年休制度を導入する企業は22%(年次有給休暇の現状について - 厚生労働省)となっている。

 そして、仮に制度があったとしても、制度だけつくっても上手くいかないと上原さんは付け加える。