「伸びているキッチンの人たちの課題感を直接知れたことが大きかったです。売上を増やすには(対応する)デリバリー事業者を増やす必要がありますが、そのためにはタブレットも増やさなければなりません。そこで1番負担になるのが、事業者ごとのオペレーションが異なること。ある程度の端末数になると『タブレットをずっと見る人』を雇わなければいけなくなり、余計に人件費がかかってしまうこともあるんです」(中野氏)

この課題を感じている飲食店は他にも存在するのか。中野氏はニーズを検証するべく、まずはサービスのコンセプトを記載したLP(ランディングページ)だけを作ってウェブ広告を出稿してみた。するとわずか1万円ほどの広告費にも関わらず、約40社から問い合わせの連絡が届いたのだという。

それを機にOrderlyの開発を本格的にスタートし、21年の3月から一部の企業に対してベータ版を提供。機能改善を進めつつ、今夏からは有料版の提供も始めた。

今後は対応するデリバリーサービスやPOSレジサービスの数を拡充させつつ、本部向けのダッシュボードの機能開発などに取り組んでいく計画。またエンタープライズの顧客が多いため、サポート体制の強化も進める予定だ。

そのための資金として、 DNX Ventures、DIMENSION、Headline Asia(旧Infinity Ventures )、個人投資家の河合聡一郎氏などから総額1億1000万円の資金調達も実施した。

「日本のデリバリー市場は(先行する)アメリカの2017年頃の状態で、ようやく飲食店がデリバリーサービスを導入し始めた段階」であり、今後市場の成長に伴ってより多くの事業者がデリバリーならではの課題に直面するというのが中野氏の見解だ。

すでに海外では日用品など飲食以外の領域でもオンデマンド配達系のサービスが広がり始めており、いずれは飲食店以外の店舗でも同様の悩みが発生しうる。Toremoroとしてはそのような状況を見据え、中長期的には「オンデマンドコマースのインフラ」として外食産業以外の領域にもサービスを展開していきたいという。