もともとはSprocketを立ち上げる前の2010年頃、深田氏自身がゲームの要素をビジネスに応用することで人の行動を変える「ゲーミフィケーション」の考え方に行き着いたことが、1つの転換点となった。

翌年にはこの概念も踏まえつつ、ウェブ上でのコミュニケーションを通じてユーザーの行動を変容し、CVの改善につなげていく取り組みの一貫としてウェブ接客事業の検証を開始。2014年にSprocketを設立し、本格的にウェブ接客サービスに取り組み始めた。

現在のSprocketには数年間にわたってサービスを提供してきた中で得られた知見を基に、ウェブ接客に必要となる基本的な仕組みが取りそろえられている。

シナリオを複数のステップに細かく分けられる「複数ステップ」機能や「動画接客」機能のほか、ABテストやヒートマップのような効果測定機能も実装。並行して外部ツールとの連携も積極的に進めており、たとえばECサイトの会員データと連携することで年齢や住所を使ってセグメントを分けることもできる。

シナリオを実施する期間やパターンなども細かく出し分けながらABテストをすることができる
シナリオを実施する期間やパターンなども細かく出し分けながらABテストをすることができる
ユーザーの行動や属性に合わせて、バナーやテキストなどのサイト内コンテンツを自動で出し分ける「コンテンツパーソナライゼーション」機能も実装
ユーザーの行動や属性に合わせて、バナーやテキストなどのサイト内コンテンツを自動で出し分ける「コンテンツパーソナライゼーション」機能も実装

深田氏が事業の検証を始めた2011年とは異なり、現在はウェブ接客の仕組みを持つ他社サービスが「KARTE」や「Flipdesk」を筆頭に複数存在する状況だ。それでもSprocketが事業を拡大できた背景には、プロダクトと同じくらい力を入れてきたというカスタマーサクセス(CS)体制と、それによって生まれた“かゆいところに手が届く”機能にある。

そもそも深田氏の頭の中には「ツールだけで価値が出せるわけではない」という考えが当初からあった。だからこそ、Sprocketでは単にツールの使い方をレクチャーするだけでなく、顧客と一緒にエンドユーザーがつまづいているポイントを探り、打開策を考えるところまでを伴走してきた。

今では顧客からの要望があればCROの内製化もサポートするし、反対に運用のリソースがなくて困っている顧客に対しては“運用代行”を行うこともある。

「この業界の歴が長いからこそ、『高いツールを導入したものの、使いこなせずに解約した』企業の事例をいくつも目の当たりにしてきました。自分たちがベンダーの立場になったら、(ツールを提供するだけでなく)ちゃんと成果にをつなげるところまでを責任を持ってやっていかないと、結局同じようなことになってしまう。その危機感があったため、CSにはものすごく力を入れてきました」(深田氏)

ツールと人によるサポートをセットで提供し、CVR(コンバージョン率)やCPA(顧客獲得単価)といった、顧客が求める成果に対してまでコミットするというのがSprocketの基本的な考え方。その結果として冒頭でも触れた通り、顧客の平均CV改善率は148.66%と高い数字を記録しており、これがわかりやすい価値にもなっているという。