「OYOを辞めてスタートトゥデイに参画してからは、ずっとエンタメや不動産など、いろいろな新規事業を提案していました。その中で、自分が前澤のお金に対する考え方に共感してスタートトゥデイに入った経緯もあったので、フィンテック事業を提案してみたんです。すると、その構想が前澤にすごく刺さった。それまでの提案には、前澤は非常に厳しかったのですが、フィンテック事業だけはすんなりやることが決まりました」(山口氏)

山口氏や複数の業界関係者によると、前澤氏や山口氏は当初、自身の個人資産でスタートアップに投資する取り組みである「前澤ファンド」でフィンテック事業を検討していたという。だがこの取り組みではスタートアップと組むことはできなかったため、新会社を立ち上げ、ゼロイチでフィンテック事業を立ち上げることとなった。

ただ、2人ともフィンテックのプロではない。そこで前澤氏がフィンテック領域の専属メンバーを募集するnoteを公開し、Twitterにも投稿。この採用募集をきっかけに入社することになったのが、白石氏だった。

白石氏はヤフーで「Y!mobile」や「Yahoo!マネー」などの立ち上げを経て、決済プロダクトの統括責任者に就任し、PayPay立ち上げにも携わっていた。2019年には暗号資産交換業を営むディーカレットに参画し、CTOを務めている。

前澤氏とは共通の知人も多く、またソフトバンクグループで直接の面識はなかったものの、山口氏とも共通項があった白石氏。採用選考で初めて会った2人と意気投合し、入社はトントン拍子に決まった。そして2020年11月、前澤氏個人の100%出資の新会社としてスタートしたのがARIGATOBANKだ。

最初のプロダクトであるkifutownは、寄付を受けたい人とそれを応援したい人とをつなぐ、CtoCの寄付送金プラットフォームだ。現時点では支援者は前澤氏のみ、iOS版アプリのみでサービスをスタートしている。前澤氏によるTwitterでの告知効果もあり、アプリのダウンロード数はリリースから1週間で50万件を超えた。すでに複数の寄付プロジェクトを公開しているが、現時点ではすべてのプロジェクトが終了している。

「お金に困っている人をゼロにする」ことをビジョンに、「ありがとうの力で新しいお金の流れを作る」をミッションに創業したARIGATOBANK。最初に選んだフィンテックサービスが、なぜkifutownというかたちだったのか。