これまでイークラウド上では8社が資金調達を実施。同サービスを通じて1000人以上の個人がエンジェル投資家となった。代表取締役を務める波多江直彦氏は「累計の調達金額や案件数は競合に比べればまだ少ないものの、濃い事例が生まれてきている」と手応えを語る。

投資家が応援団になる“応援投資型クラウドファンディング”

イークラウドの仕組み
イークラウドの仕組み

波多江氏によるとイークラウドではスタート時から「ベンチャー企業のSR(Shareholder Relations)」に力を入れており、これがサービスの1つの特徴になっているという。

SRとはベンチャー企業が投資家向けに実施する情報発信やコミュニケーション施策のこと。具体的には活動報告や株主優待、株主限定イベント、SNSコミュニティを活用した交流といった「ベンチャー企業と投資家との関係性作り」を手厚くサポートしてきた。

「(投資型CF事業者にとっては)ビジネスの源泉になるため、案件数を増やすことを追求してしまいがちです。ただ自分たちは最後発として、それだけでは健全なマーケットはできないという考えで事業を始めた経緯があります。だからこそ投資家には案件の質を担保していい投資機会を提供しつつ、自分が投資した資金によって会社がどのように進んでいるのかがわかる仕組みを整えてきました」

「サービスを運営する中で気づいたのは、投資家に対してリターンだけではない成功体験を提供することの重要性です。具体的には投資先の応援団としての楽しみ方を提供することが、投資家の満足感にも繋がるのだと感じるようになりました。自分たちの役割はその関係性作りをサポートし、投資家の熱量を温めて応援団へと変えること。この1年でその効果が検証できてきています」(波多江氏)

たとえば1号案件の地元カンパニーは、地域の名産品や旬の生鮮品をストーリーと共に贈れるカタログギフト事業を手がける。同社はイークラウドを通じて全国の株主と関係性を作り、その株主の紹介経由で各地の生産者(出品者)の獲得に成功した。

パーソナライズ入浴剤を手がけるFLATBOYSでは、芸能関係の株主の協力によってタレントを起用したプロモーションが実現。植物性の冷凍食品を開発するGrinoでは、食品会社に勤める株主の力添えによって新メニューの共同開発に向けた商談が生まれている。

このように従来のベンチャー企業と投資家では珍しかったようなコラボ事例が積み上がってきたこともあり、現在イークラウドでは自社サービスを説明する際に“応援投資型クラウドファンディング”という言葉を積極的に活用しているそうだ。