イークラウドの事例
株主とのユニークなコラボ事例も生まれてきているという

波多江氏も当初は個人投資家の多くが「値上がり益」に期待しているのではないかと考えていたという。ところが実際にアンケートを実施してみると、6割を超える投資家が「中長期でベンチャー企業の応援をしたい」という理由でサービスを使っていたことがわかった。

また“株式投資型”という表現は、場合によっては必要以上に流動性に対する期待感を生み、実際の流動性の無さとのギャップから投資家に不満を抱かせてしまう可能性がある。未成熟なベンチャー企業が多いため、すでに実績のある会社に投資をする上場株への投資とは性質も異なる。

こうした背景からサービスの世界観と株式投資型という言葉の印象が乖離していることに課題を感じたことも、応援投資型という言葉を使うようになった大きな理由だという。

欧米では投資型CFを活用して急成長を遂げる企業も

投資型CFに関しては、日本以上に英国や米国で先進的な事例が生まれている。

英国のプラットフォームとしてはCrowdcubeやSeedrsが有名。ユニコーン企業にもなったチャレンジャーバンクのMonzoやRevolutは、拡大期にこれらのサービスを活用しながら事業を加速させていった。

米国ではWeFunderが急速に成長している。近年は世界トップクラスのアクセラレーターとして知られるY Combinatorの卒業企業にエンジェル投資ができる機会なども提供。VC投資と組み合わせてこのサービスが使われる例も増えてきており、直近ではフィンテック企業のMercuryがシリーズBで著名VCなどから1億2000万ドルを集める際、その一部をWeFunderを通じて調達すると発表したことも話題を呼んだ。

米国の場合は2021年の法改正によって、投資型CFを通じた年間の調達額の上限が107万ドルから最大500万ドルまで拡張されたことがさらなる追い風となった。日本でもここ数年で事例が増える中で「市場が変わりつつある」と波多江氏は話す。

波多江氏自身、イークラウドの創業前にはVC2社で投資家として働いていた。「当時は投資型CFが新しくて異質なものに見えていて、株主が増えたら(管理やコミュニケーションを)どのように対応するのだろうかなど懸念もあった」と振り返る。

イークラウドでは特にSRに注力することでベンチャーと株主の関係性作りをサポートしてきた
イークラウドでは特にSRに注力することでベンチャーと株主の関係性作りをサポートしてきた

イークラウドでは株主の大和証券グループの力も借りて、株主の属性を確認する仕組みを構築。初期から電子契約やオンライン株主総会のようなテクノロジーを取り入れ、オンライン上で株主とのコミュニケーションが円滑に進む体制を整えながら事業を広げてきた。