子猫の育成・収集から始まった「NFTゲーム」

NFTゲームの先駆けは2017年にリリースされた『CryptoKitties(クリプトキティーズ)』と呼ばれる、子猫を集めて取引する育成・収集ゲームだ。子猫の1匹1匹にNFTが付与され、珍しい子猫ほど高値で取引される。

ユーザーは自分の持っている子猫を他の子猫と交配することで、さらに珍しい形態を持つ子猫を生み出すことができる仕組みだ。運営会社のDapper Labsが作成したベーシックな子猫だけでなく、交配によって突然変異で生まれた「Fancy Cats」や、開発者が独自につくった「Exclusive Cats」、誤ったデザインのままリリースされてしまった「“Misprint” Kitties」なども存在し、これらのほとんどが非常に高い価格で取引されている。

誤って黒色のボディに黒色のヒゲをつけてしまった「“Misprint” Kitty」 画像出典: CryptoKitties
誤って黒色のボディに黒色のヒゲをつけてしまった「“Misprint” Kitty」 画像出典: CryptoKitties

CryptoKittiesはゲーム内で手に入れたアイテムやキャラクターを、そのゲームの枠を超えて「Collectibles(収集物)」として保有・取引できる点が新しい。

運営側に管理された世界ではなく、ユーザーが自身の手で新しい子猫を生み出し、仮想通貨を使って分散的に売買することができるモデルがプラットフォームの自由度を上げ、拡がりをもたらし、多くのユーザーを取り込んでいる。また、運営会社としても、これら無数の子猫の家系図や売買データを中央集権的に管理することは現実的ではない。NFTによってはじめて実現されたゲーミングエコノミーの形態と言えるだろう。

このCryptoKittiesの流れを汲んで、Axie InfinityやThe Sandboxといった世界中で最もプレイされている現在のNFTゲームタイトルが生まれた。Axie InfinityはDAU(1日あたりのアクティブユーザー)が180万人、1日当たりの取引額は3300万米ドル(37億円超)と公表しており、プレーヤーの中にはゲームからの収入だけで生計を立てている人もいる。

NFTゲームがつくりだす「新たな経済圏」

NFTゲームがもたらした上記のようなモデルは”Play to Earn”(プレイして稼ぐ)と呼ばれ、新たな経済圏を作り出した。最近では、さらに進んで、NFTの特性をうまく利用して従来とは異なるアプローチでゲーム開発を行うプレーヤーも登場している。

例えば、ゲームスタジオは、アイテムやキャラクターのNFTを先行販売することで潤沢な運転資金を前もって確保することができる。ゲームをリリースしてユーザーを集めてユーザーが課金し始めるという、従来かかっていた一連のリードタイムが必要なく、企業としてのキャッシュフローが安定して確保できる点は画期的だ。