現在同社では「水レジストジェットスラスタ(水蒸気式推進機)」「水イオンスラスタ(水プラズマ式推進機)」「水統合スラスタ(水蒸気式+水プラズマ式推進機)」という3つの製品を開発しており、顧客の要望に応じて最適なものを提案している。

中でも水蒸式と水プラズマ式のハイブリッド型は技術的な難易度が高いため、PaleBlueの武器になりうる。どれほど強いニーズがあるのかはこれから探っていくことになるものの、すでにこれが欲しいという顧客もおり「自分たちにとって勝ち筋の1つになると考えている」と浅川氏は話す。

水統合スラスタ(水蒸気式+水プラズマ式推進機) 。大きさは 9cm×9cm×12cm
水統合スラスタ(水蒸気式+水プラズマ式推進機) 。大きさは 9cm×9cm×12cm
水イオンスラスタ(水プラズマ式推進機)の作動の様子
水イオンスラスタ(水プラズマ式推進機)の作動の様子

約1年前の資金調達時と比べると、顧客パイプラインの開拓も進んだ。経産省の案件に加え、国内の民間企業2社からも案件を受注済み。現在は海外企業も含めて小型衛星メーカーとのやりとりを始めている。

当初は浅川氏や指導教官の小泉氏ら小泉研の関係者4人だけだったチームも、約1年で19人まで拡大した。ビジネス専任のメンバーがジョインしたことに加え、自動車やエレクトロニクスメーカーなどでハードウェア開発に携わっていたエンジニアが集結したことで、事業が一気に進んだという。

「大学の研究では『エンジンの中のプラズマがどうなっているか』をひたすら調べてたりするのですが、エンジンを使う側からすれば(性能が担保されていれば)内部の状況は正直そこまで気にならないんです。エンジンを製品として作り上げる上では、むしろ電気基板や内部を制御するソフトウェアの完成度をいかに高くしていくかの方が重要だったりする。そこが大学の研究ではできなかった領域であり、会社として取り組むことで一気に加速できている実感があります」(浅川氏)

まずは2022年以降に予定しているJAXAとの実証プログラムや民間企業との宇宙実証への準備を進めながら、その先に見据える量産体制の整備などに向けて組織体制の強化に投資をしていく計画。当面はエンジンを売っていくビジネスに注力するが、ゆくゆくは「単純なハードウェアの売り切りモデルだけでなく、付随するサービスにも取り組んでいきたい」(浅川氏)という。