ステーブルコインの価格を安定させる仕組みは大きく分けて、「担保型」と「無担保型」に分かれている。担保型では、米ドルなどの法定通貨、ETH(Ethereum)などの他の暗号資産、金などのコモディティ商品を担保にすることによって、ステーブルコインの価値を保つ(価値を固定化する)。例えば米ドルを担保とするステーブルコインでは、理論上、1つのステーブルコインを、いつでも発行体に1米ドルで買ってもらうことが可能だ。一方、無担保型では、発行体が市場需要に応じて供給量を増減させることで、価格を安定させる。市場の需要は非常に早いスピードで変わるため、基本的にはアルゴリズムを使って自動的に供給量を調整している。

では、具体的にどんなステーブルコインが流通しているのだろうか。以下に説明する。

4つの主要ステーブルコインと日本円ステーブルコイン「JPYC」

USDT(Tether)

USDTはTetherが発行する、米ドルに連動した米ドル担保型のステーブルコインだ。発行量の上限は設けられておらず、Tetherに1米ドルを支払うたびに、1USDTが発行される(実際には、各個人が直接Tetherに発行を依頼するようなスキームではなく、取引所などがまとめてTetherに発行を依頼し、個人に販売する流れとなっている)。

現時点で発行量(時価総額)は740億ドル(約8兆3900億円)で、ステーブルコインの中では最大となっている。1日の売買高は790億ドル(約8兆9600億円)前後で、その時価総額を上回るほどだ。Tetherは親会社のBitfinexとともに相場操作をしたことや、発行量と同額の米ドルを担保として保有していない可能性などが疑われてきたが、ネットワーク効果で成長し続けている。下図はUSDTの発行量の推移だ。特に2021年に入ってから、今まで以上のスピードで伸びている。

CoinMarketCapのスクリーンショット
CoinMarketCapのスクリーンショット

USDC(USD Coin)

USDCはCentre Consortiumというコンソーシアムが発行する、米ドルに連動した米ドル担保型のステーブルコインだ。前述のUSDTのローンチは2015年上旬。一方で、USDCの発行開始は2018年下旬だった。

かなり後発となったが、USDTの保有量が不明朗になっている中で、USDCは大手会計事務所がその保有されている現金や資産を確認し、準備高が発行しているステーブルコインの数と一致していることを検証し公表している。また、Centre Consortiumの創立メンバーは決済サービス会社のCircleと仮想通貨取引所のCoinbaseだ。Circleの主要株主はGoldman Sachsで、Coinbaseは上場企業。社会的信用性がTetherより高いのは明確だ。USDTと同様に、2021年に入ってから急成長している。