孫正義から絶大な信頼を得た男を口説くたった1つの作戦

年収が上がらない、モチベーションが上がらない、仕事と家庭の両立がうまくいかない ── そんな悩める人たちに「読むだけで元気になる」と話題なのが、森武司著『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。
“元芸人社長”であるFIDIA（フィディア）の森社長は、吉本のお笑い芸人引退後、4年間の引きこもりニート、家電販売員を経て仲間と起業。現在年商146億円、Financial Times「アジア太平洋地域急成長企業ランキング 未上場日本一」、「ベストベンチャー100」受賞、経済産業省選定「地域未来牽引企業」、11事業すべて黒字化、新卒500人採用、創業以来18年連続増収増益を果たした。また、素人ながら化粧品開発に取り組み、あの資生堂を抜き、アマゾン年間売上1位となった注目の経営者でもある。
まさに人生を大逆転させた元芸人社長だが、その秘密はデビュー作で一挙公開した「仲間力アップマル秘マニュアル」の6大奥義にあるという。
本連載では初の著書『スタートアップ芸人』の一部を抜粋・編集しながら、「仲間力（＝仲間をつくる力）」アップによる人生大逆転の法則を見ていきたい。

1兆円企業になるために

　時価総額上位の企業に共通するものとは何だろう。

　いずれも金融事業をやっていることだと思う。

　僕らは今、146億円企業だが、本気で「1兆円企業」を目指している。

　そのためには金融事業がどうしても必要だ。

　そこで「金融事業でナンバーワンの実力者をヘッドハンティングしよう」ということになった。

　では、ナンバーワンとは誰か。

　当社COOの中川は独立時代、人事コンサルティング業とヘッドハンティング業を並行して行っていた。

　当時のヘッドハンティングは一人決めたら年収の3分の1の額が入るのが相場なので、年収1億円の人を決めたら約3300万円が入ってくる。

狙うは孫正義、北尾吉孝から
すごい信頼を得た男

　金融系は高給人材が多い。

　転職を決めたら動く金額も大きいので、中川は「金融業界のすごい人リスト」を自分でつくっていた。

　その中でリストアップされた高橋良巳さんは能力・実績ともに抜群。しかも人間性の評判もよかった。

　中川はそれまで一回だけ面談したことがあり、「腰が低かった」という。

　高橋さんは野村證券の営業出身で、韓国経済が悪くなったとき、ソフトバンクの孫正義さんに、

　「今のうちにサムソン、ロッテ、LGの株を買ったほうがいい」

　と提案した。

　もちろん、野村證券を通してという話だが孫さんは、

　「ソフトバンクなら実現できるから転職してきてほしい」

　と言ったそうだ。

　高橋さんが丁重に断ると、孫さんは野村證券を通すことに合意してくれたが、今度は野村證券サイドが「それほどの大金を動かすのは難しい」となった。

　結局、高橋さんはソフトバンク韓国の社長となり、韓国企業の株を安く買った。韓国経済が立ち直ると、1500億円の利益を出した強者だ。

　その後、高橋さんは当時の韓国大統領に直談判してイー・トレード証券韓国（当時）の事業許可をもらい、韓国2位の証券会社にまで育て上げた。

　その間、韓国の会社をM＆Aして何社も上場させた。

　高橋さんは、ソフトバンクのナンバーツーだった北尾吉孝さんがSBIホールディングスをつくるときにも、ソフトバンクに顧問として残りつつ活躍した創業メンバーの一人でもある。

1兆円企業へ、
金融事業のナンバーワンを求め韓国へ

　僕らが金融事業をつくりたいと考えたとき、中川の紹介で、韓国にいるSBIコリア・ホールディングス社長（当時）の高橋さんに、役員6人中5人で会いに行った。

　高橋さんは僕らが投資のお願いにきたと思ったらしい。

「いえ、違います。高橋さんをヘッドハンティングしにきました」
「何を言ってるの？ 君たちの会社は80億円だけどこっちは9000億円の会社だ。2桁違うよ」
「本気で金融事業をつくりたいんです。
1兆円企業をつくるにはどうしても金融事業が必要なんです。高橋さんが必要なんです」

　僕らが熱く語っていると、

　「日本から5人分の渡航費、ホテル代をかけてよくきてくれた。気持ちは伝わった。近くにうまい焼肉屋があるから行こう」

　と連れていってくれた。

「うまいですね。涙出そうですわ」
「おもろい感じの子やなと思ったら君ら大阪か」
「高橋さん、無理ですかね」
「いや帰らせてや。監禁やめて」
「いや、帰さないですよ」

　しばらく冗談を言い合っていると、高橋さんがこう言った。

「孫さん、北尾さんにヘッドハントされたときを思い出すな。森さん、今何歳？」
「40です」
「孫さんや北尾さんが40歳のとき、2人の会社はもっと大きかったけど、何か通じるものがあるな。なんとか協力してあげたい」

　と言いながら、社外取締役になってくれるという。

「うちの役員は年収1800万円が最高額です。社外取だと半分くらいでも問題ないですか？」
「そんなに必要ない。月10万円でいいよ。時間の許す限りできることはなんでもするので、いつでも聞きたいこと聞いて」

　こうやって僕らは高橋さんとの距離を縮めていったのだった。

（本稿は『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の一部を抜粋・編集したものです）