移住先として人気のあるマレーシアですが、サービスが整っている日本から来ると、実に多くの人が驚きます。断水や停電、家の水漏れもわりとよくあります。日本人移住者たちからよく聞く不満は、「マレーシアの人はちゃんとしてない」「常識が備わっていない」「日本ではこんなこと起きないのに」です。
役所も「ちゃんとして」なかったりします。役所での手続きは対応する担当者によって異なることも普通ですし、職員が書類を無くしてしまうことも起きます。ミスをしても日本のように責任を追及して謝りに来てはくれません。淡々と、「まあ、間違いはお互いあるよね。じゃあ」でおしまいになることが多いのです。
マレーシアの税務署に申告に行ったときのこと。
提出日ギリギリになって、慌てて近くの税務署に駆け込みました。日本と同じく、自分で入力するシステムですが、パソコンで入力を始めたら、途中からどうしても先に進まないのです。
係の人に聞いたら「システムトラブル中」とのこと。周りを見たら、画面の前で、じーっと待っている人がいっぱいいます。「トラブル中」などといった張り紙もなく、みな淡々と復旧を待っているのです。
職員たちものんびりしています。「いつ直るんだ!」「どうなっているんだ!」と怒鳴ったり、文句を言ったりする人がいないので、緊迫感がまるでなく、トラブルが起きていることすら気がつきませんでした。
「午後には直っているかもしれません」と言うので、一旦家に帰り、出直してみたものの復旧していません。諦めて帰ろうと思ったら、大雨が降り出しました。やむまで雨宿りです。マレーシアでは大雨で足止めを食らうこともよくあります。税務署内のカフェには、私のように雨が上がるのをのんびり待つ人が大勢いました。しばらくすると雨がやんだので、ダメ元でもう一回会場に行ってみたところ、なんとシステムが直っていました。無事、係の人に入力を教えてもらいながら提出して帰宅しました。
ここに住む人びとは、道路の穴は注意して避け、エスカレーターが止まっていれば歩き、信号が壊れていれば、道を譲り合いながら運転します。電車が遅れても文句を言っている人を見たことがありません。人びとは静かに待っています。システムに頼りすぎず、他人に期待しすぎず、自分の責任で行動するようになります。