女性写真はイメージです Photo:PIXTA

多くの精神疾患をみずから経験し、現在はカウンセラーとして活動している筆者によれば、「自己肯定感」という言葉は、世間に誤解されている。こころが傷を負ったとき、自然治癒させる力が自己肯定感であり、これを高めるためには、日頃の言葉の使い方が重要だという。※本稿は、中島 輝著『口ぐせで人生は決まる こころの免疫力を上げる言葉の習慣』(きずな出版)を一部を抜粋・編集したものです。

「もうダメ」「できない」否定の言葉は
こころのブレーキとして働く

 私は、これまで1万5000人を超えるクライアントのカウンセリングを行ってきました。

 そんな中で、自己肯定感が低い人に共通する口ぐせがあることがわかってきました。ここでは、そんな自己肯定感が下がってしまう口ぐせを示しておきたいと思います。

 まず、いちばんわかりやすく、また重大な危険信号は「否定語が増えること」です。

 たとえば、「できない」「もうダメだ」「絶対ムリ」などが否定語の代表格。こうした言葉を多用していたら、要注意です。

 これは自分自身に対して言っていることもありますし、子育て中の人でお子さんに対してよく言ってしまっている人も多いです。もしくは部下に対する指導として、「これじゃあダメだよ」「何回ミスするんだ!」と否定的な言葉を使いがちな人もたくさんいらっしゃいます。

 なぜ否定語が危険なのか?それは、否定語は「こころのブレーキ」として働くからです。

「もうダメだ」とか「できない」という言葉は、言うなれば、通行止めの看板。自分で通行止めのサインを出し、こころがストップするように仕向けているんですね。

 当然、物事を前に進めることはできなくなるし、道をふさがれた閉塞感、先の見えない不安感で、気持ちがぐんぐん下がっていきます。

 さらに、否定語を頻繁に使っていると、否定的な側面を見る目ばかりが育ってしまいます。あらゆるものを疑うようになり、反射的に否定する言葉を探してしまう。そうなると、拒否したり、排除したり、諦めたりする思考がくせになるのです。

 たとえば、会社で部署異動があったとします。希望していない業務をすることになったあなたは、チームの目標を聞いても「どうせムリだよ」と思い、「がんばって出世しても大変になるだけ」とやる気もない。

 すると、潜在意識は「できない」「意味がない」ことを裏づける情報を集めるようになります。目標を達成できなかったと聞いたり、昇進した同期が忙しく働いているのを見つけては「ほらね、やっぱり」と思って安心する。

 これでは、こころの中に、自分や他人の失敗体験をたくさん積み上げていくことになります。やる気も自己肯定感もますます失われていくでしょう。

 このように、否定語を多用していると、「できるかもしれない」という肯定的側面が見えなくなって、なにかにつけて「どうせムリだ」「難しいよね」とネガティブな側面ばかりが視界に入ってきます。