多くの人が『人との対話』に苦手意識を抱いている。できればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするNGな言葉から、その場の空気をあたたかくするひと言、自然な会話を生む言葉へと切り替えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋。話す相手が次第にリラックスする意外な方法をご紹介する。

心地よい場所Photo: Adobe Stock

シンプルかつパワフルな方法

 カタく重いオープニングの空気を緩める、シンプルかつパワフルなアドバイスをひとつしておきましょう。それは「名前を呼ぶこと」です。

「おはようございます」と「小林さん、おはようございます」では、相手(小林さん)に与える印象はまったく変わります。

 私は経験上、「まめに空気を緩めて損はない」と心から思っています。

 特にオンラインのコミュニケーションの場合は、「小林さん、いかがですか?」と明確に名前を呼ばなければ、発言のタイミングをつかみにくいものです。

 それなら、オープニングから呼んでしまえというわけです。

「みなさん」という呼びかけは対立姿勢を生む

×「みなさん、会議を始めます」

 これが×の言い方だという理由は2つ。

 第一に、「みなさん」は誰を指すわけでもない抽象的な言葉で、いくら多用しても場の空気はほぐれません。第二に、そう呼び掛けることで、「ファシリテーター対参加者全員」という構造を示してしまいます。

 参加者が多くて、最初はやむを得ず「みなさん」を使うなら、とにかく会議中は、まめに各人の名前を呼ぶようにしましょう。

名前を呼ぶと、売り上げは2倍に?

 南メソジスト大学(米国)のダニエル・ハワード博士の実験で、あるグループには名前を呼んで「ヘイ! ジョン! クッキー買ってよ」と言い、別のグループには名前を呼ばないで「クッキー買ってよ」と言いました。

 すると、名前を呼んだグループの購入率は、名前を呼ばなかったグループの約2倍となりました。これも名前を呼ぶ効果を示しています。

リラックスしてほしい

居場所があると感じさせられる

 名前を呼ぶことは、「あなたはこの場の大切な一員です」と伝え、居場所だと感じてもらうためでもあるのです。

 人間には「愛・所属の欲求」があり、自分の居場所のためならがんばれるもの。「一所懸命」という日本語もあるくらいです。

 とにかく、まめに発言者の名前を呼んでみてください。